【経済分析】日本はデフレ戦争に勝てるか?(下)

2014年6月15日 22:56

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【6月15日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

(以下は、「【経済分析】日本はデフレ戦争に勝てるか?(上)」の続き)

前回のブログでは、今年のエルニーニョの発生が来年2015年の景気後退の予兆であり、安倍政権が大きな試練に立たされるかもしれないと書きましたが、実は70年周期の景気循環からみても来年2015年というのは70年周期の景気循環が大底をつける厳しい年になるかもしれないという同じ結論が出てくるのです。

70年周期の景気循環に連動して、日本の株式市場もこのグラフにみるように大きなサイクルを形成してきました。終戦直後からバブルのピークであった1989年までの40年余りにわたって日本の株式市場は長期上昇局面を形成しましたが、バブル崩壊後は長期の下降局面に入りました。その間、短期的に景気が回復に転じるとともに株価も底を打って上昇に転じるものの、下降トレンド線を超えることができず、景気後退に転じると株価も再び下落し、そのたびに前回の安値を切り下げる下落相場が続いてきました。

よく「安倍政権のアベノミクスが円安・株高をもたらした」と言われていますが、冷静に眺めれば安倍政権になってからの株価の上昇は景気回復とともに上昇した過去の相場の域を出ないものです。もし70年周期の景気循環がまだ大底をつけていないとすれば、株式市場の長期下降トレンドも実はまだ続いており、景気が後退に転じれば株式市場はまた下落相場に入り、日経平均は1万円割れはおろか、戦後最安値の7000円を割り込む可能性すら考えられます。

現状の株価水準に目が慣れてしまうと、日経平均が1万円を割れるかもしれないと話しても誰も信じないと思いますが、だいたい物事は何でもそうですが、「変化」というのは多くの人が全く予想しなかった時に突然やってきて、全く予想できなかったような結果をもたらすのが常です。

昨日の日経新聞には、「消えた市場の『恐怖心』」という見出しの記事が載っており、世界的な金融緩和で楽観的な見方が金融市場を覆っており、VIX指数などマーケットの予想変動率を示す指標が歴史的な低水準まで下がっていることを伝えています。しかし、エルニーニョや70年周期の循環から予想される景気やマーケットの大きな変化を思う時、予想変動率の異常な低下が逆に思いがけない急激な変化の予兆であるように私には感じられるのです。【了】

野田聖二(のだせいじ)/埼玉県狭山市在住の在野エコノミスト
1982年に東北大学卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。94年にあさひ投資顧問に出向し、チーフエコノミストとしてマクロ経済調査・予測を担当。04年から日興コーディアル証券FAを経て独立し、講演や執筆活動を行っている。専門は景気循環論。景気循環学会会員。著書に『複雑系で解く景気循環』(東洋経済新報社)『景気ウォッチャー投資法入門』(日本実業出版社)がある。著者のブログ『私の相場観』より、本人の許可を得て転載。

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