【経済分析】日本はデフレ戦争に勝てるか?(上)

2014年6月15日 22:38

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【6月15日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

「経済を予測する」ということについて何回かにわたって(5/30〜6/4のブログ)書いてきました。

経済の予測を「ナスカの地上絵」にたとえて、ナスカ台地にどのような絵が描かれているかを知るためには飛行機で上空に上ってナスカ台地全体を見渡さなければいけないように、経済を予測するためには、経済をマクロな視点から眺める必要がある。つまり、経済が辿ってきた足跡を歴史的な視点から観察しなければ、経済が将来どこに行こうとしているのかを知ることはできない、ということをお話してきました。

それでは、日本経済を上空から眺めるとどんな地上絵が見えてくるのでしょうか。それがこのグラフです。

日本経済が明治開国以来辿ってきた足跡を見渡すと、戦前と戦後でほとんど同じような絵が描かれていることが発見できるのです。その間隔はちょうど70年です。つまり70年周期の景気循環が日本経済には存在し、今日本経済で起きていることは70年前(ところによっては71年前)にも起きており、今後何が起こるかは70年前の歴史がすでに教えてくれているということです。

それでは、今から70年前に日本では何が起きていたのか。

70年前の1944年というとまさに太平洋戦争のさ中で、米国と激戦を交えていた時です。
読者はきっとこう思われるはずです。「今日本はどことも戦争をやっていないじゃないか」

しかし、少し想像力を働かせてみてください。今日本が激戦を繰り広げている相手がいます。「デフレ」です。

太平洋戦争当時の日本は、膨大な戦費を調達するために、日銀がお金をどんどん刷って国債を引き受けました。米国に勝つためには手段を選んでいる余裕などなかったのです。
今日本では、「デフレ」に勝つために日銀がなりふり構わず湯水のように資金を供給する「異次元の金融緩和」という同じことをやっています。

1941年12月の真珠湾攻撃をもって日本は米国に宣戦布告しましたが、71年後の2012年12月に安倍政権が誕生して所信表明演説で安倍首相はデフレからの脱却を宣言し、デフレに宣戦布告しました。

長期戦になると勝ち目はないとみた山本五十六長官は、ハワイの真珠湾にある米艦隊を攻撃して形勢を一気に有利に導こうとする奇襲作戦をとりましたが、70年後に安倍政権はアベノミクスの1本目の矢である‘大胆な金融政策’をデフレとの戦いに勝つための切り札と考え、「最初の1ヵ月が勝負だ」と考えた日銀の黒田総裁は就任早々の2013年4月の決定会合で、「2年でマネーを2倍に増やす」という奇襲作戦に出ました。(詳しくは2013/4/25のブログ「短期決戦」)

デフレ戦争を太平洋戦争に無理にこじつけていると思われるかもしれませんが、私は決して比喩で語っているわけではなく、本質的に70年前と同じことを繰り返していると感じるのです。

勝てない相手米国との戦争で多くの国民が犠牲となり1945年に敗戦という結果で70年周期の景気循環は幕を閉じましたが、もし歴史が繰り返しているのだとすれば、デフレ戦争は多くの犠牲を伴いながら70年後の2015年にデフレに無条件降伏するという結果が予想されます。(「【経済分析】日本はデフレ戦争に勝てるか?(下)」に続く)【続】

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