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ポール公演中止から見えた団塊世代向け音楽ビジネスの拡大
5月に行われる予定だった元ビートルズ、ポール・マッカートニーの来日公演が、ウイルス性炎症から来る体調不良により全公演中止となった。1ファンとしては非常に残念な出来事ではあったが、この公演中止が大きく話題になったことにより、逆に団塊世代向けの音楽ビジネスの好調ぶりが浮き彫りになったように思う。
ポールの来日は昨年11月に続いて2年連続。今回は惜しくも中止となったが、昨年に続きチケットを購入していた多くは青春時代にビートルズをリアルタイムで体験した団塊の世代だった。
同世代のミュージシャンでは、ローリングストーンズも今年2月末から3月頭にかけて来日。S席18000円、A席16000円、B席14000円という価格設定にも関わらず、東京ドーム公演のチケットは完売した。しかもステージ花道を囲むGC(ゴールデンサークル)席は80000円だったというから驚きだ。
ミリオンヒットが連発され、CDバブルと言われた1990年代後半から15年が経ち、音楽ビジネスはここ10年以上苦境に立たされてきた。原因はCDの購買層だった10代20代の世代が、スマートフォンやインターネットを始めとする多様でインタラクティブな娯楽に流れたことが大きい。音楽メディア自体もそれに取り込まれた結果、「ダウンロードや動画サイトで聴くので十分」と言って、音楽にお金を払うことに価値を見出さない若い世代も増えてきているようだ。
一方で団塊世代はレコードやCDの進化とともに歩んできた世代だ。音楽にお金を払うことは当然、しかも出来れば良い音質でも聴きたいと考える人が多い。ここに目を付けた音楽業界は、大物アーティストの来日公演や、高額でもより高音質なオーディオシステムの売り出しなど、ターゲットを若い世代よりも上の世代へと移してきた。
上は団塊世代、下はCDバブルを体験している30代前半までをターゲットに、過去の名盤の高音質リマスター盤再発やボックスセットの販売も増えている。CDだけでなく映像作品でも、ブルーレイの高画質で昭和の映画シリーズや、今の30代が幼い頃にヒットしたアニメシリーズをボックス化するなどの動きが強まっている。音楽ビジネスも他の業界と同様、資産を持つ団塊世代をマーケットの中心に移したと言えるだろう。
しかし裏返せば、老若男女が知っているヒットソングが生まれず、またその可能性がある曲が世に出ても、情報が溢れすぎて世代を越えて届けられることが難しくなってしまったとも考えられるのではないか。子どもも口ずさむことが出来て、大人も耳を傾けられる平成のヒットソングを聴きたいと思うこと自体、もはや時代遅れなのかもしれない。しかし、「歌は世につれ 世は歌につれ」という言葉を思い返してみても、皆がイヤフォンで別の歌を聴いている今の風景は、やはり少し寂しい。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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