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【コラム 山口亮】会社法マフィアの実情(上)
【5月26日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
●株価を上げる本命
アベノミクス相場への失望、あるいは失速が、巷で取りざたされているなか、株価を上げる本命は、金融政策ではなく、実は資本市場改革だということが、少しずつ認識されつつある。アベノミクスとは、すなわち、民主党政権下のアンチビジネスの姿勢に失望していた最悪の市場心理が、それまでの普通の心理にもどったというだけに過ぎない。
資本市場改革を考える、その一つの前提として、日本の商法(会社法)学者や、会社法立法担当者を取り巻く利害関係の構造がある。彼らは「会社法ムラ」と影で呼ばれている。また会社法立法過程に参加して、その後ビジネス弁護士になった人々とその予備軍は「会社法マフィア」と揶揄されている。
●会社法学者の意見書代の相場は数百万円?
最近、投資家向けメディアであるさくらフィナンシャルニュースで報じられた商事事件で、商事事件を専門で担当する東京地裁民事8部に対して、会社側から会社法学者の意見書が証拠提出された。一般的な相場として、意見書代の相場は数百万円とされている。
種類株主総会の基準日公告を行わなかったことを理由に、株主総会の決議取消請求が裁判所から認容された、「アムスク株主総会決議取消請求事件」で意見書を書いたのは以下の面々だ。ちなみに、この意見書は採用されていない。
中東正文氏(名古屋大学法科大学院教授)
福島洋尚氏(早稲田大学大学院法務研究科教授)
大谷禎男氏(駿河台大学法科大学院教授、元東京地裁民事8部統括判事)
またHOYAの代表執行役の鈴木洋氏らが、株主提案の12議案の議題の要領や提案理由についての掲載命令をうけた「HOYA株主提案議題等掲載命令仮処分事件」で意見書を書いたのは、次の学者だ。
田中亘氏(東京大学社会科学研究所准教授)
なお、株主提案を載せるかどうかで、株主と会社が毎年のように裁判所でもめているのは、上場企業でもHOYAぐらいだだが、別の学者も、意見書を執筆している。
江頭憲治郎氏(早稲田大学大学院法務研究科教授)
田中氏や中東氏は、いわいる弁護士資格のない大学教員なので、年収は1000万円程度だろう。仮に意見書を1本書けば、数百万円もらえるということになれば、数か月分の給与に相当する。
会社法関連訴訟は、株主側と会社経営陣側の争いとなっているケースが多いが、学者としての良心や信念に曲げて、会社側有利の法解釈を記載した意見書を執筆する誘惑には勝ちにくい。
そもそも、意見書は「印鑑」をもらうことが重要だ。
下書き作業は依頼する事務所の「アソシエート弁護士」が行っていることが少なくない。学者がそれに手直しして印鑑を押すだけで数百万をもらえるというのが諸悪の根源ではないかと思う。
田中亘氏は、ここ数年のHOYAの仮処分事件だけでも、すでに西村あさひ法律事務所から依頼を受けて、2本の意見書を執筆している。この意見書代は、当然、HOYA株主の資産から拠出されていることになる。
また、商法学者は、意見書執筆を発注してもらうだけでなく、定年退職後に大手法律事務所にカウンシルなどの身分をもらうことも多く、そのことも、弁護士事務所と学者の潜在的な癒着の原因になっていると指摘される。
●商法学者の法律意見書が採用されない
実際に、HOYA株主総会議題等記載仮処分事件(平成26年)も、アムスク株主総会決議取消請求訴訟も、地裁段階まででは、株主側の実質的勝訴に終わっている。ちなみに、採用されなかった意見書を依頼していたのは、西村あさひ法律事務所や、二重橋法律事務所といった会社法分野では名の通った事務所だ。
実は、日本の裁判所は、その程度は中立だ。
「アムスク決議取消請求訴訟」では、民事8部の元統括判事だった大谷禎男氏の意見書が、大谷氏が以前に統括判事を務めた民事8部に提出されたが、見向きもされていない。日本の裁判所は、そういった意味では、見捨てたものではない。【続】
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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