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【経済分析】日銀の「2年で物価2%」は無理(2)
【5月26日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
一つは「景気の回復が続く」こと。上のグラフからもわかるように、物価は景気が回復局面にある時には上昇し、景気が後退局面に入ると下落するという景気循環とともに変動する性格を持ちます。消費者物価が2015年春までに2%に届くためには、その頃まで景気回復が続くことが条件となります。ただ、ブログに書いたように、景気回復は来年後退局面に入る可能性がかなりあるとみており、こうした見方に立つと日銀の物価目標は達成が難しくなります。
ここで注意しなければいけないのは、物価が上がること自体が景気後退を促進する要因となってしまうことです。上のグラフを見ると、バブル崩壊以降、物価が2%を超えると景気が後退局面に入っていることがわかります。日本の経済構造が変わらない限り、日本経済は2%を超える物価上昇には耐えることができない、とみることもできます。先週の『週間エコノミスト(5/27)』の中で、クレディ・スイス証券のチーフエコノミストである白川浩道氏が、消費増税とそれに先立つ輸入インフレの影響で日本経済はかなり脆弱になっており、15年1〜3月期には消費者物価が前年比で再びマイナスに転じる可能性があると指摘していますが、その時期はともかく、もし来年景気後退に入れば物価は2%どころか再びマインス圏に沈む可能性が高いと予想されます。
物価は短期的にはこのように景気循環とともに循環していますが、グラフを長期の視点で眺めると、バブル崩壊以降リーマン・ショック直後の2009年まで、物価は底の水準を徐々に切り下げて長期的に下落傾向を辿ってきたことがわかります。5/17のブログでは、経済の「循環」と「成長」の違いについて書きましたが、経済のこのような2つの側面に対応して、物価もまた短期的には景気循環に合わせて変動すると同時に、長期的には経済成長に合わせて長期的なトレンドを形成しています。つまり、物価が長期的な下落傾向を辿ってきたということは、とりもなおさず日本の経済成長のトレンドが下降を続けてきたことを表しているわけです。
問題はこの物価と経済成長の関係をどう捉えるかということです。
このような「デフレ傾向」こそ、バブル崩壊後の長期にわたる日本経済の低迷の原因であるとの見方から、大胆に金融緩和を行って物価を引き上げれば日本経済はいわば健康体に戻って、低迷状態を脱するのではないか、との考え方に立っているのが、黒田日銀であり、アベノミクスです。
しかし、このデフレ、実は日本だけではなく、今や米国や欧州など先進国に共通の現象となりつつあることは、4/7のブログで述べたとおりです。
この図の2つのグラフからは、先進国の経済成長率が趨勢的に鈍化傾向を辿ると同時に、物価も長期的に下落傾向を辿ってきたことがあらためて確認できます。日本はデフレの先頭を走っており、米国や欧州もやがて日本と同じ問題に直面することになるということです。「デフレ」はもはや日本固有の問題ではなく先進国に共通の問題であり、それは先進国の経済成長率が低下の一途を辿っていることと同義であり、それは資本主義経済そのものが持つ矛盾と関係しており、そのような歴史的視点を持たなければおそらく日本の「デフレ」も「低成長化」も正しく捉えることはできないのではないかと考えています。【続】
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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