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【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】次週に重要イベントを控えているが、潮目変化を確認するかが焦点
(5月25日~30日)
今週(5月26日~30日)の株式・為替相場は、週末30日に4月全国消費者物価指数など日本の主要経済指標、そして次週に米5月雇用統計など海外の重要イベントを控えて、米国10年債利回りと米国株の動向も睨みながら様子見ムードを強める可能性もあるが、テクニカル面での下振れ懸念がやや後退し、前週(5月19日~23日)後半に高まった潮目変化ムードを確認するかが焦点だろう。
前週の日本株を振り返ると、週前半は日銀金融政策決定会合と黒田日銀総裁の記者会見待ちで様子見ムードの強い展開だったが、後半22日と23日は日経平均株価が2日間合計で420円00銭上昇した。週間騰落率で見ると、日経平均株価は365円58銭(2.60%)上昇して週末23日の終値は1万4462円17銭、TOPIXは21.37ポイント(1.85%)上昇して週末23日の終値は1180.44だった。
日銀の追加金融緩和見送り決定後も21日の相場が底堅い展開となったことで安心感に繋がった。そして21日の米国株が上昇したことを受けて22日は買い優勢でスタートし、中国5月製造業PMI速報値(HSBC)がやや改善したことや、かんぽ生命保険が15年3月期に日本株を3000~3500億円規模で買い増す方針と報じられたことも好感した。
外国為替市場では、21日の黒田日銀総裁記者会見後にドル・相場が1ドル=100円80銭台までドル安・円高方向に傾く場面があったが、影響は一時的だった。その後は米国債券市場でポジション調整の動きが一巡し、22日に米10年債利回りが2.55%台まで上昇したことに加えて、日本株の上昇を睨みながら1ドル=101円台後半までドル高・円安方向に切り返した。
そして前週末23日の米国市場では、S&P500株価指数が取引時間中の史上最高値を更新し、終値でも史上初めて1900ポイント台に乗せた。またダウ工業株30種平均株価とナスダック総合株価指数も上昇した。米4月新築一戸建て住宅販売が市場予想を上回ったことを好感した。CME日経225先物6月限(円建て)は1万4560円だった。為替はドル・円相場が一時1ドル=102円02銭を付ける場面があり、1ドル=101円90銭近辺で終了した。ユーロ・円相場は1ユーロ=139円00銭近辺で終了した。
前週末23日の米国市場の結果を受けて、来週初26日の日本株は買い優勢でのスタートとなりそうだ。ただし26日の米国市場がメモリアルデーで休場のため、買い一巡後に上値を追うのか膠着感を強めるのかが、潮目の変化を確認するうえでのポイントになりそうだ。その後は重要イベントの谷間となり、週末30日の4月全国消費者物価指数など日本の主要経済指標、次週6月4日~5日のG7首脳会議、5日のECB(欧州中央銀行)理事会、6日の米5月雇用統計を控えて様子見ムードを強める可能性もあるだろう。
5月20日~21日の日銀金融政策決定会合では、市場の大方の予想どおり追加金融緩和を見送り、金融政策の現状維持を決定した。黒田日銀総裁は記者会見で、2%の物価上昇率目標の達成に向けてこれまでどおり強気の見通しを示した。追加金融緩和に関しては、消費税率引き上げ第2弾の実施判断に向けて7月実施との見方が依然として優勢だが、10月実施との見方や、追加金融緩和の可能性はほぼなくなったとの見方も有力になってきた。
追加金融緩和見送り決定後の株式市場では、売り仕掛けの動きは限定的で結果的に底堅い展開となった。外国為替市場では一時1ドル=100円80銭近辺まで円買いが優勢になる場面があったが、海外市場では1ドル=101円台半ばに戻した。日銀の追加金融緩和見送りを仕掛け材料とする動きは後退したようだ。
国内の消費増税の影響に関しては、駆け込み需要の反動減がほぼ想定内の水準であり、マイナス影響が週を追って縮小傾向であることも確認されている。主要企業の15年3月期業績見通しでも、消費増税によるマイナス影響に対して楽観的な見方が優勢だ。
また一部ではエルニーニョ発生による冷夏の影響が懸念されている。気象庁が5月23日に発表した6月~8月天気予報によると、この夏の気温は北日本が冷夏の恐れ、東日本は平年並み、西日本は高めの「西暑北冷」としている。ただし「暑すぎる夏」は外出を控えるなど消費に対してマイナス面が大きく、逆に「適度な暑さ」が消費にとってプラスとの見方もある。重要なのは早い時期に気温が上昇して残暑が短いことだろう。夏物も秋物も早く動き出すことになる。
政府が6月中に取りまとめる予定の「骨太の方針」と「新成長戦略」では、市場が期待する法人税実効税率引き下げを明記する方向で調整が進んでいる。こうした材料に対して、これまで市場はほぼ無反応だったが、潮目変化でポジティブに解釈するムードが徐々に高まる可能性があるだろう。
海外要因としては引き続きウクライナ、タイ、中国などの地政学リスクが撹乱要因となる。ウクライナ情勢に関しては25日の大統領選の結果次第で予断を許さない状況が続く。軍事クーデターの形となったタイに関しては市民生活や企業活動に対する影響が当面の焦点だ。中国に関しては景気減速やシャドーバンキング問題に対する過度な警戒感が後退しているが、一方で南シナ海での領有権問題や新疆ウイグル自治区での爆発事件など地政学リスクが高まっている。
チャート面で見ると、日経平均株価は5月19日と21日の取引時間中に1万4000円台を割り込む場面があったが、4月11日の取引時間中の安値1万3885円11銭を割り込まず、終値では1万4000円台を維持した。一方で上値は5月23日の取引時間中に4月25日以来となる1万4500円台を回復する場面があり、終値で25日移動平均線を回復して75日移動平均線に接近した。来週は75日移動平均線を突破して潮目の変化を確認できるかが焦点となる。
また東証マザーズ指数は年初来安値更新が続いていたが、5月20日の取引時間中の633.02をボトムとして切り返し、5月23日には4営業日続伸して終値で5月7日以来の700ポイント台を回復した。こうした動きが個人投資家のマインド改善に繋がりそうだ。
株式市場での物色動向としては、3月期決算発表が一巡して個別銘柄に関してやや材料難となっているため、アナリストレポートによるレーティング変更などによる見直し買いに加えて、個人投資家のマインド改善でテーマ関連株や新興市場銘柄への関心が高まる可能性があるだろう。
為替については、米国債券市場でポジション調整の動きが一巡し、米10年債利回りが上昇に転じて2.5%台半ばまで戻した。このためドル・円相場は1ドル=101円台後半~102円台後半の動きとなりそうだ。ユーロ・円相場に関しては、6月5日のECB理事会での追加利下げ観測が高まっているため、1ユーロ=138円~140円近辺での動きだろう。
その他の注目スケジュールとしては5月26日の日銀金融政策決定会合4月30日開催分議事要旨、独6月GfK消費者信頼感指数、27日の日本4月企業向けサービス価格指数、米3月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米3月FHFA住宅価格指数、米4月耐久財受注、米5月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数、27日~28日のブラジル金融政策決定会合、28日のユーロ圏5月景況感・業況感指数、29日の日本4月商業販売統計、米4月中古住宅販売仮契約指数、米1~3月期GDP改定値、30日の日本4月失業率・有効求人倍率、日本4月家計調査、日本4月全国・5月東京都区部消費者物価指数、日本4月鉱工業生産速報、日本4月住宅着工戸数、米4月個人所得・消費支出、米5月シカゴ地区購買部協会景気指数などがあるだろう。
その後は6月2日のインド中銀金融政策決定会合、3日の豪中銀理事会、4日~5日のG7首脳会議、英中銀金融政策委員会、5日のECB理事会とドラギ総裁の記者会見、6日の米5月雇用統計、9日の日本1~3月期GDP2次速報、12日~13日の日銀金融政策決定会合、17日~18日の米FOMC(連邦公開市場委員会)とイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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