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【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】レンジ相場継続だが地政学リスクやテクニカル面などで波乱含み
(5月19~23日)
■日銀会合と米長期金利の動向を睨みながらレンジ相場継続だが、地政学リスクやテクニカル面などで波乱含み
来週(5月19日~23日)の株式・為替相場は、大勢としてレンジ相場の継続を想定するが、20日~21日の日銀金融政策決定会合が当面の焦点となる。米国10年債利回りと米国株の動向も睨みながら、25日予定のウクライナ大統領選や中国を巡る地政学リスクの高まり、さらにテクニカル面での下振れ懸念などで波乱の可能性もあるだろう。
日銀の追加金融緩和に対する期待感が後退しているため、日銀金融政策決定会合が材料視されない可能性もあり、国内の3月期決算発表が一巡して個別銘柄に関してもやや材料難となる。日経平均株価が1万4000円台を割り込めば三角保ち合い下放れの動きに注意が必要だ。
前週(5月12日~16日)の日本株は方向感に乏しい展開だった。主要株価指数の週間騰落率を見ると、日経平均株価は103円00銭(0.73%)下落して週末16日の終値は1万4096円59銭、TOPIXは6.44ポイント(0.55%)下落して週末16日の終値は1159.07だった。
堅調な米国株を睨みながら、13日には日経平均株価が終値で前日比275円92銭高と大幅反発したが、週後半には米国株が反落したことや為替が円高方向に傾いたことで警戒感が広がった。16日の取引時間中には日経平均株価が前日比281円72銭安の1万4016円49銭と、1万4000円台割れ寸前まで売られる場面があった。
米国株式市場では、5月13日にダウ工業株30種平均株価が取引時間中に1万6735ドル51セント、終値で1万6715ドル44セントと、いずれも史上最高値を付けた。S&P500株価指数も取引時間中に1902.17まで上昇して史上初めて1900台に乗せ、終値でも1897.45の史上最高値を付けた。しかし14日~15日には米10年債利回りが2.5%台割れまで急低下したことを受けて米国株が反落し、為替のドル・円相場は1ドル=101円台前半までドル安・円高方向に傾いた。さらにユーロ圏1~3月期GDP速報値が低成長だったことを受けて、6月5日のECB(欧州中央銀行)理事会での追加利下げ観測が強まり、ユーロ・円相場は1ユーロ=138円台後半までユーロ安・円高方向に傾いた。
週末16日の米国市場では、米4月住宅着工件数が市場予想を上回る高水準だったことで米10年債利回りが上昇する場面があったが、その後は米5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が市場予想を下回ったことなどで、全体としてやや小動きとなった。終値では米国株は小幅に反発し、CME日経225先物(円建て)は1万4170円だった。為替は1ドル=101円50銭銭近辺、1ユーロ=139円10銭近辺で終了した。
前週末16日の米国市場の結果を受けて、来週初19日の日本株はやや買い優勢でのスタートとなりそうだが、方向感に乏しい展開だろう。その後は20日~21日の日銀金融政策決定会合の結果と黒田日銀総裁の記者会見待ちとなるが、日銀の追加金融緩和に対する期待感が後退しているだけに材料視されない可能性もあるだろう。そして売り買いともにやや材料難の状況となり、大勢としてはレンジ相場継続を想定する。ただし海外要因として米10年債利回りと米国株の動向、25日予定の大統領選に向けたウクライナ情勢、そして中国を巡る地政学リスクなどで波乱の可能性もあるだろう。
国内の消費増税関連では、主要小売各社の4月の売上動向などから消費増税後の反動減がほぼ想定内の水準であり、個人消費に対するマイナス影響が週を追って縮小傾向であることも確認されている。主要企業の15年3月期業績見通しでも消費増税によるマイナス影響に対して楽観的な見方が優勢だ。また政府が6月中に取りまとめる予定の「骨太の方針」と「新成長戦略」では、市場が期待する法人税実効税率引き下げを明記する方向で調整が進んでいる。しかし市場では、こうした状況を好感する動きは見られない。日本経済が順調との見方は日銀の追加金融緩和に対する期待感の後退というネガティブ姿勢に繋がり、政府の「骨太の方針」や「新成長戦略」に対する期待感も高まらない。
海外要因としては引き続きウクライナ情勢が撹乱要因となる。25日予定のウクライナ大統領選に向けて米ロの外交的駆け引きが続き、ウクライナ政権側と親ロシア派の衝突が激化する可能性もあり、それに伴ってリスクオフの動きを強める可能性があるだろう。
中国の景気減速やデフォルト(債務不履行)に関しては、もはやサプライズとはならないだろう。来週は18日に中国4月新築住宅価格、22日に中国5月製造業PMI速報値(HSBC)の発表が予定され、結果次第では売り仕掛けの材料とされやすいが、影響は一時的・限定的だろう。ただし中国とベトナムおよびフィリピンを巡る地政学リスクの高まりには注意しておきたい。
日経平均株価を日足チャートで見ると、2月以降は1万4000円近辺の下値では買いが入って下げ渋っている。しかし一方では上値が切り下がり、三角保ち合いの形が鮮明になってきたため下放れの動きに注意が必要となる。4月21日の取引時間中に付けた1万4649円50銭を上抜けるか、4月11日の取引時間中に付けた安値1万3885円11銭を下抜けるかが焦点だ。
株式市場での物色動向としては、3月期決算発表が一巡したため個別銘柄に関してもやや材料難となる。テーマ関連株に対する関心も低下している。15年3月期見通しを精査したアナリストレポートによる業績予想修正や、レーティング変更などを頼りに見直し買いが入るかどうかが焦点だろう。会社予想を踏まえて、15年3月期業績予想をどのように修正するのか、レーティングをどのように修正するのかが注目され、強気の業績予想や格上げが安心感に繋がる可能性もあるだろう。
為替については、米10年債利回りが低下してドル安・円高方向に傾いている。15年春~夏に向けて米FRB(連邦準備制度理事会)のゼロ金利政策解除が視野に入るだけに、基本的には米10年債利回りが上昇してドル高・円安方向というシナリオだったが、緩和的な金融政策の長期化観測などで米10年債利回りは足元で逆に低下傾向を強めている。このため当面のドル・円相場は1ドル=101円台での推移となりそうだ。ユーロに関しては次回6月5日のECB理事会での追加利下げ観測が高まっているため、当面はユーロ売り優勢で1ユーロ=138円~140円近辺での動きだろう。
その他の注目スケジュールとしては、19日の日本3月機械受注、21日の日本4月貿易統計、米FOMC(連邦公開市場委員会)4月29日~30日開催分の議事要旨公表、22日のユーロ圏5月総合・製造業・サービス部門PMI速報値、米4月中古住宅販売、米4月景気先行指数(コンファレンス・ボード)、米4月シカゴ連銀全米活動指数、米5月製造業PMI速報値、23日の独IFO業況指数、米4月新築一戸建て住宅販売などがあるだろう。
その後は、5月29日の米1~3月期GDP改定値、6月3日の豪中銀理事会、4日~5日のG7首脳会議、英中銀金融政策委員会、5日のECB(欧州中央銀行)理事会とドラギ総裁の記者会見、6日の米5月雇用統計、9日の日本1~3月期GDP2次速報、12日~13日の日銀金融政策決定会合、17日~18日の米FOMC(連邦公開市場委員会)とイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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