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【小倉正男の経済羅針盤】ウクライナ軍事介入はロシアの「ストーカー行為」
■プーチンの「梟雄」ぶり
ウラジーミル・プーチン――KGB出身のロシア大統領であり、やり口を見ていると「梟雄」そのものだ。 大統領職は、2度目である。1999年エリツィン大統領のもとで首相、2000~2008年に大統領(2期連続)の座にいた。その後、首相に降りたが、権力を実体として握り続けていささかも離すことはなかった。
2012年に再び大統領に戻った。権力争いがシビア極まりないロシアで、この経歴を見るだけでエグいな、と思わせるものがある。 このしたたかさには、いまの世界のどの政治家でも太刀打ちできないところがある。
シリア内戦介入の秒読み寸前で、アメリカのオバマ大統領は、プーチン大統領の提案を受けて爆撃回避を行った。 プーチン提案とは、シリアの化学兵器を国際管理するというものだった。オバマ大統領としては「借り」をつくってしまったわけである。
ロシアのウクライナへの軍事介入でも、アメリカ,EUは動けないと足元を見られたのではないか。プーチンにとっても、軍事介入はいかにも苦し紛れの下策だが・・・。
■「静かな軍事介入」を装っているが
ロシアのクリミア半島へのロシア軍展開は、当初、市民による「自警団」だと称していた。子供だましだが、露骨な軍事介入の格好は極力見せないという動きをとった。
メディアの報道によると、国旗を持ったウクライナ軍の兵士たちが丸腰で顔も隠さず国歌を歌って行進し、前面には機関銃などの完全装備で遮るロシア軍兵士――。 目出し帽のロシア軍はパンパンと警告発砲して「挑発するのか」と。 ウクライナ軍のほうは、「丸腰なのに挑発はありえない」と。
ハンガリー動乱(1956年)、「プラハの春」後のチェコ事件(1968年)のようにロシア軍が戦車でハンガリーやチェコの市民をあからさまに蹂躙・弾圧するような動きはとっていない。
メディアの前とはいえ、「静かな軍事介入」を徹底している。だが、やっていることは本質的にスターリン、ブレジネフの時代とあまり変わらないのではないか。
■腕ずくでも離さないロシアの「ストーカー行為」
ロシアにとっては、ウクライナは地政学的に脇腹であり、ロシア離れ=EU加盟は黙視できない――。しかし、それこそが「冷戦」時代の論理ではないか。
「脇腹」だからといって、近隣の独立国に軍事介入というのはキリのない話になる。どだい「脇腹」とか言い出したら、近隣諸国はすべてそうであるからだ。
ロシアは、天然ガスをウクライナ国内のパイプラインを通して、EU諸国に供給=輸出している。ウクライナが内戦にもなれば、パイプラインが無事ということはありえない。
ガスのパイプラインが破壊されれば、ロシアも致命傷を受けるが、ドイツなどEU諸国も大変に深刻な事態になる。ロシア、EUが内心で恐怖しているのはそれではないか。 実はマーケットが短期的に最も恐れるシナリオはそのケースともいえるかもしれない。
チキンゲームの様相ということになるが、いつまでも腕ずくでも離さないというわけにはいかない。「ストーカー」をやられても嫌いなものは嫌い――。
ひと筋縄にはいかないが、中長期で俯瞰して見れば、ウクライナのロシア離れは確定的と言えるのではないか。 (経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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