「iPS細胞、がん化リスクは克服した」 山中教授が誤認識に懸念

2014年2月19日 13:10

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記事提供元:エコノミックニュース

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子研究ユニットリーダーによるSTAP細胞が世界中を湧かせている。そんな中、STAP細胞の先輩ともいうべきiPS細胞の生みの親、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が12日、同研究所のHPに「iPS細胞とSTAP幹細胞に関する考察」と題した声明文を発表した。

 山中教授はSTAP細胞およびSTAP幹細胞は素晴らしい成果であり、自分たちも研究に取り入れて行きたいとした。また、iPS細胞の研究開発で得られたノウハウが蓄積しており、最大限の協力を行いたいとしている。

 しかし、iPS細胞に関しては、一般には誤解されているため、次のように現状を紹介した。2006年に発表した最初のiPS細胞においては、樹立にレトロウイルスという染色体に取り込まれる遺伝子導入方法を用い、またc-Mycという発がんに関連する遺伝子を使った。しかし、最新の再生医療用iPS細胞の樹立においては、①遺伝子が一時的に発現し、染色体には取り込まれず消える方法に変更、②c-Mycは発がん性のない因子で置き換える、という工夫がなされており、大幅にリスクが低減したという。

 この方法によるiPS細胞の安全性は動物実験で十分に確認された。その結果として、高橋政代先生(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター)らのiPS細胞を用いた臨床研究が、厚生労働省において認可された。今後は臨床研究により、安全性の最終確認を行っていく。

 一方で、STAP幹細胞においては、半数以上の細胞が死滅するようなストレスが細胞にかかることもあり、細胞内における遺伝子の状態がどうなっているか、まだ十分にはわかっていない。そのため、安全性については、人間の細胞でSTAP幹細胞が樹立された後に、動物実験等で十分に検証される必要があるとした。

 iPS細胞は極めて再現性の高い技術。さらに、すでに世界中で何百という研究グループによって作られている。また特殊な疾患の患者を除いては、年齢を問わず、どんな方の細胞からも作ることができることが実証されている。STAP幹細胞については、広く普及するには再現性や互換性の検証が重要な課題になるとした。

 特に、互換性は重要で、ES細胞やiPS細胞でこれまでに積み重ねられた研究成果を利用することが出来ず、臨床研究や治験で必要なプロトコールをすべて作り直すことになった場合は、大変な労力と費用がかかる。さらにiPS細胞技術に関しては、京都大学の基本特許が日米欧を含む28カ国1地域で成立している。STAP幹細胞技術についても、知財の行方を見届ける必要があるとした。

 まとめとして、山中教授はヒトiPS細胞技術は、高い再現性と過去の研究成果との互換性を有する技術であり、安全性や有効性においても臨床研究での最終確認を待つ段階にあると実用化段階間近であることを示した。(編集担当:慶尾六郎)

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