北方領土問題後回しで、日ロ関係スピード改善? エネルギー利害が要因

2014年2月10日 23:00

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記事提供元:NewSphere

 安倍首相は8日、冬季オリンピックが開催されているロシアのソチでプーチン大統領と会談した。日ロ首脳の会談はこの13か月間で5回目である。プーチン大統領は安倍首相を暖かく迎えた。

【プーチン大統領の歓迎ぶりは】

 会談の場に到着した安倍首相の車をプーチン大統領と共に出迎えたのは、もうじき2歳になるメスの秋田犬だったとロシアの国有通信社RIAノーボスチは伝える。「ゆめ」と名づけられたこの犬は、2012年7月にモスクワを訪れた際、安倍首相が犬好きのプーチン大統領のもとに連れて行ったものだ。当時生後3か月だった小犬は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた日本に対するロシアによる復興支援への感謝のしるしとして、秋田県からプーチンに贈られたのだ。

【会談の内容は】

 RIAノーボスチによれば、日ロ両首脳はもっぱら経済協力の問題を中心に話し合ったという。これは両首脳が、意見の分かれる北方領土問題の議論を専門家に委ねたためだとプーチン大統領のスポークスマンは語っている。

 ロイターは会談後の安倍首相の会見について報じている。これによると、日時は未定だが、プーチン大統領が秋に日本を訪問することで2人は合意したという。プーチン大統領は2005年に大統領として、2009年には首相として日本を訪れている。

【安倍首相の平和条約締結への意欲】

 第2次世界大戦の終結間際にソ連は北方領土を占領したが、この北方領土をめぐる争いが日ロ間の貿易を阻害してきたとロイターは見る。ロシア政府が、貿易問題のブレークスルーは平和条約次第だと語ったというのだ。安倍首相は会談後の会見で、「平和条約の締結は最も困難な課題であり、歴史的なミッションだが、われわれはこの問題を次の世代に先送りしたくない」と述べている。

【エネルギー貿易をめぐる日ロ両国の利害】

 ロシアからの原油輸出は、東シベリア・太平洋石油パイプラインによって、アジア中心へと方向転換しつつある。ロシアはヨーロッパ向けの原油とガスの供給をアジアに振り向け、今後20年で少なくとも倍増させる計画だとロイターは報じている。

 これは2011年の被災以後、原発の代替用として大量の化石燃料を輸入しなければならなくなった日本にとっても、好機の到来であるとロイターは伝える。日本は今や世界で出荷されている液化天然ガス(LNG)の1/3を消費しているのだ。

 日ロ両国の関係改善はスピーディーで、日中間における緊張の高まりとは対照的であると各紙は述べる。安倍首相は6月にソチで開かれるG8首脳会議でもプーチン大統領と会談する予定だ。

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