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暮らしやすい社会の実現に向け、地球規模で加速するZEH
近年、住宅にとっての「暮らしやすさ」の定義が少し変わりつつある。周囲の環境や住宅設備、間取りなどはもちろんだが、エネルギーに対する考え方も、これから住宅購入を考える際には重要な要素になってくるだろう。
政府も住宅のセロエネルギー化や低炭素化への取り組みに力を入れており、「2020年までに標準的な新築住宅でネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)を実現し、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現する」という目標を掲げ、経済産業省・環境省・国土交通省らが中心となって「低炭素社会に向けた住まいと住まいかた推進協議会」を共同で実施している。また、各住宅メーカーでもすでに対応を始めており、続々とZEH基準をクリアした商品の導入が目立つようになってきた。
たとえば、積水ハウス<1928>が5月に販売を開始した宮城県名取市の「スマートコモンステージ美田園」は、全棟ゼロ・エネルギー住宅から成るスマートタウンとして話題となった。また、大和ハウス<1925>でも、これまでの切妻屋根の南面屋根を大きくすることで屋根面積を拡大する、同社独自の新設計「ハイブリッドエコロジールーフ」を採用した「xevoYU」シリーズを展開、延床面積が46坪のタイプで、最大9.60kWのソーラーパネルを搭載できることでZEHを実現している。
また、昨年11月に街開きしたパナホーム<1924>の「パナホーム スマートシティ草津」も、分譲住宅団地において、現在日本一となる、ネット・ゼロ・エネルギー達成率121パーセントを実現していることで注目されている。
全87戸からなる戸建住宅に合計約540キロワットのパナソニック製の太陽光発電システムを搭載。年間約580メガワットアワーを発電することが可能だ。その一方で、同社独自の「家まるごと断熱」「エコナビ搭載換気システム」などの仕様により、優れた断熱性能と省エネ性を確保することで、創出エネルギー量が消費エネルギー量を約20パーセントも上回るネット・ゼロ・エネルギー達成率121%を実現した。うち、大容量太陽光発電システムで屋根を構成する「エコ・コルディス」という商品では、なんと最大244パーセントを達成するという。ちなみに、パナホームの試算によると、この「エコ・コルディス」1棟あたりの経済メリットは、自家消費分も含めて年間44.9万円となっており、条件によっては20年間で約900万円も見込めるという。
先進各国では、ZEHを単に環境政策としてだけではなく、国家の成長戦略の一環と位置づけているところも多い。たとえば、イギリスでは2016年を目処に全新築住宅をZEH化する目標を掲げており、実質2016年以降はZEH基準を満たしていない住宅は新築できない。フランスも同様に、2020年までに全新築住宅・建築物をZEH化する方針を発表している。また、この動きは今後も広がりをみせ、新興国にまで及ぶとみられている。
世界的な流れに比べると、残念ながら日本はまだまだZEH後進国で、国民のZEHに対する認知も意識も低いといわざるを得ない。日本が先進国として今後も発展し、暮らしやすい住宅と社会を実現するためには、メーカーに薦められるだけでなく、国民一人ひとりがZEH化を推し進める意識を持つべきではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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