非常識?老練?中国外交官の海外世論工作を識者が批評

2014年1月15日 12:30

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記事提供元:NewSphere

 英BBC番組などでの劉暁明・駐英中国大使と林景一・同日本大使との論戦を取り上げたザ・ディプロマット誌は、良く訓練された中国外交官らを、広報戦における「新兵器」と評している。

 一方ハフィントン・ポスト(米国版)は、友好的態度と威圧的行動を併用し、ダブルスタンダード的行動で美味しい所だけをさらおうとする姿勢を、老練だが非常識とみる論調だ。

【英語に堪能な外交官を動員し、特に戦勝各国の世論に支持を訴える中国の戦略】

 劉大使は1月1日、英テレグラフ紙に、ナショナリスト路線の安倍政権を「ハリー・ポッター」シリーズに登場する悪の魔法使い、ヴォルデモート卿になぞらえる記事を寄稿。林大使はのち同紙で、中国こそヴォルデモート卿だと反論するに至った。

 これを受けて1月8日、BBCニュースナイトは両大使の対談番組を放映した(両大使は直接対面せず、意図的に別スタジオに配置された)。激論となったが、ザ・ディプロマット誌は劉大使のほうが討論術の面で優れていたと評価する。林大使は、司会の単刀直入な質問に回答をためらう場面が多かったようだ。

 ザ・ディプロマット誌は、英語その他の言語に堪能な外交官を多数動員し、世界各国、特に戦勝各国の世論に支持を訴えるという、中国の戦略を指摘する。同誌によれば、中国は2012年の尖閣国有化時からすでに、世界に向けて外交官らによる反日舌戦を開始していた。劉大使も英国人視聴者の琴線に触れようと、「歴史から学べない者はそれを繰り返す運命にある」という、チャーチル元英首相の格言を引用している。

【いいとこ取りのお家芸はそろそろ限界】

 ハフィントン・ポスト紙が指摘するのは、「傍観者席に座ってゲーム終盤を待ち、しかるのち急降下して戦利品を主張する芸術を完成させている」という、中国の常套策だ。例えばイラク戦争では戦闘に参加していないのに、最終的に石油の大部分を獲得していた。一方でアジア域内の話となると中国は一転して、自分に注目が集まることを望む。「中国は良き隣人として自らを描き出しつつ、全力で隣人たちに誰がボスか確実に知らしめようとしている」のだという。

 また中国はそうした善隣外交として、積極的に地域内の会議に参加したり条約を締結するが、一部の条項を恣意的に無視するような「創造的解釈」を行い、容認される限界を探ろうとする、と指摘されている。例えば2002年締結の「南シナ海における関係国の行動に関する宣言」で自粛を求められている無人島や岩礁での活動を行っているし、1996年締結の「海洋法に関する国連条約」も、2006年になって一部の条項を無視すると宣言しながら、尖閣問題では日本に対し同条約を持ち出している。

 これに対し記事は、中立を表明しつつ実際には日本寄りな米国ともども、互いにどこにあるか判らない相手の一線をいつのまにか越える危険を指摘。中国の台頭は事実だとしても「良き隣人なのか体重800ポンドのゴリラなのか」ハッキリすべきだと主張している。

【売り言葉に買い言葉はやめよ】

 フォーブス誌は、ポートランド州立大学のメル・ガートフ名誉教授のインタビューを掲載した。それによると昨年のオバマ・習近平カリフォルニアサミットの成功は誇張され過ぎており、また中国の軍事力はまだまだ米国の足元にも及ばず、従って中国からすれば、米国のアジア重視は危険でしかない。その上安倍政権が強硬策を取れば、問題は抜き差しならなくなるのであり、従って日本は再軍備などではなく、技術力で平和的に国際貢献する国を目指すべきだとのことである。

 ザ・ディプロマット誌も、日本が中国の外交攻勢に「単純明快な応答を出して」、BBCニュースナイト司会の言う「子供の喧嘩」に陥ることを警告している。

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