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「和食離れ」が文化遺産登録の背景に 海外報道でも指摘
4日、和食が国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の無形文化遺産に登録された。海外では健康的な料理として定着している和食にさらに箔がつくことで、日本のイメージアップや食材の輸出増加に期待が寄せられている。
一方で、国内では食事の西洋化が進んでおり、特に若者を中心に和食離れが進んでいると海外メディアは指摘している。
【国内で進む和食離れの深刻さ】
AP通信は、寿司や酒などが世界的にもブームとなっているものの、肝心の日本では和食の影は薄くなる一方で、正に「危機的状況にある」と報じている。その原因として、日本人が「ワーカホリック(仕事中毒)」であり、金銭的にも時間的にも手軽に食べられるファストフードが、人々のスタイルに合っているのだとしている。
実際、この15年間でのコメの消費量は年間944万トンから779万トンに減少している。関係当局の1997年から2012年までの15年間における統計データによると、コメの1人当たりの年間消費量は、66.7Kgから56.3Kg(約16%減)となっている。さらに、和食の味覚を味わうために不可欠な「うまみ」を多く含む味噌は2655gから1922g(約28%減)へ、しょうゆは8.7Lから6.3L(約28%減)といずれも減少している。これに伴い、和食の根本である「うまみ」を理解できない人々が増えてきているという。
和食離れと共に失われるのは繊細な味覚だけではない。日本特有の季節の感覚や作法、さらには家族の絆も危ぶまれているようだ。和食は正月やひな祭りなどの年中行事と密接に関連しており、家庭で祝いごとの料理を作り家族や友人らと楽しむ習慣が失われてしまうのではないかと危惧されている。
【和食の専門家が危機的な状況を語る】
AP通信は、専門家からの懸念の声も取り上げている。都内にあるレストランの料理人は、「和食は見た目も美しく、調理にも食するのにも時間がかかる。今の人々は仕事が忙しく食事を楽しむ時間がない」と語っているという。
また、京都の専門学校では、和食コースよりもイタリアンやフレンチのコースが人気だという。学長は「和食の和は、調和の和」として、作り手だけでなく食材への感謝も込めた食事前後の挨拶(いただきます、ごちそうさま)の奥深さや、箸では一口分づつ口に運び食べ物を突き刺したりはしないなど、作法は守るべき日本らしさであると述べ、UNESCO登録でその魅力が国内でも再確認されることを願うとしている。
政府が閣議決定したUNESCOへの和食の登録推進の背景にも、「日本再生」の思いが込められていた。無形文化遺産として登録されたことで、海外への和食関連ビジネスの活性化だけでなく、若者を日本文化の担い手として育てていくことはできるだろうか。
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※この記事はNewSphereより提供を受けて配信しています。
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