【鈴木雅光の投信Now】基準価額の高いファンドは割高か?

2013年12月4日 12:54

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

  昨年11月から、日経平均株価は80%近く値上がりした。当然、日本株を組み入れて運用している投資信託の運用実績も好調で、なかには基準価額が2万円を超えているものも散見される。

  多くの投資信託は、運用開始時の基準価額が1万円なので、それが2万円に値上がりすると、どうしても割高という印象が強まる。結果、基準価額が着実に上昇しているにも関わらず、徐々に資金流入が細り、運用そのものに支障を来すことになる。「基準価額が高いファンドは割高」という誤解が、ファンドの寿命を縮めてしまうのだ。

  このような誤解が生じるのは、恐らく基準価額を株価と同じように見做しているからだろう。でも、投資信託の基準価額は、株価と似て非なるものである。

  株価は、市場参加者の需給関係によって上下する。したがって、その企業が持つ本質的な価値に期待や失望が加味されて、株価が形成される。期待感が強まれば、株価は割高になるし、失望感が強まれば割安になる。

  これに対して基準価額は、ファンドに組み入れられている株式や債券の時価総額を、受益権口数で割って求められるもので、そこに需給は介在しない。つまり、そのファンドを買う人がいくら増えたとしても、基準価額が需給を反映して値上がりすることはないのだ。

  もちろん、ファンドに組み入れられている株式の全てが割高と評価される水準まで買われ、結果的に基準価額が上昇すれば、そのファンドは割高ということになるだろう。が、その状態を放置したままにするファンドマネジャーはいない。ファンドに組み入れられている株式が割高になれば、それを売却し、他の割安な銘柄に入れ替えているはずだ。そして、入れ替えた銘柄の一部が割高になれば、またそれを売却して、割安な銘柄に入れ替える。これを繰り返して、徐々にファンドの資産価値(=純資産残高)が積み上がり、基準価額も上昇していく。

  つまり基準価額は、組入資産の値上がり益や配当金などを積み上げた成果であり、ファンドを購入、解約する人の需給を反映したものではない。したがって、基準価額が1万円であろうが、2万円であろうが、割高、割安という概念とは全く無縁なのだ。(鈴木雅光=証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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