【小倉正男の経済羅針盤】「バイバイ・アベノミクス」の不安

2013年10月12日 13:09

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■「オバマケア」問題

  「オバマケア」は、オバマ大統領による医療保険制度改革だが、一部政府機関が閉鎖される事態にまで陥っている。

 反対している共和党は、「オバマケア」が財政悪化につながり、増税につながるものとしている。

  政府が民間の経済や生活に介入するのは「社会主義」であり、増税の原因になるという考え方である。根底には、そうした思想があるとみられる。

  ――急な坂道にガードレールを設置すれば、安全性が高められる。しかし、ガードレール設置にはおカネがかかり、税金が使われる。

  自己責任なのか、社会的な安全性の範疇なのか。タックスペイヤーの懐に直結している問題で、すっきりとした解決は困難とみられる。

■経産省の賃上げ要請の経団連が協力

  日本では、茂木敏充・経済産業相が、経団連に異例の賃上げを要請――。米倉弘昌・経団連会長は、報酬引き上げに協力すると応じている。

  日本の実情からすると仕方がないのかもしれないが、これは立派に政府の民間経済への介入に映る。いわば、一線を超えた「社会主義」的な賃上げという見方や評価がなされかねない――。

  これまで利益剰余金、つまりは「内部留保」をやたら積み増してきた大企業が報酬引き上げに走る。 横並びの「親方日の丸」で賃上げとは結構な話だが、そう“大判振る舞い”は期待できないのではないか。

  政府のアベノミクスへの「上納」としての賃上げでは、ややお付き合い程度のものになりかねない。

■「バイ」か、あるいは「バイバイ」か

  一部からは短絡的に再び、「スタグフレーション」という批判も再燃するだろう。景気が回復していないのに賃上げでは、“不景気下のインフレ”に陥るという批判である。大した賃上げは期待できないのだから、いかにも頭でっかちな話ということになるのだが。

  「バイ・マイ・アベノミクス」――。

  高らかにそうは叫ばれても、内外とも沸き立たなかったという思いがある。

  あまりに日本的な経済産業省と経団連による季節外れの“賃上げ相場”演出では、「バイバイ・マイ・アベノミクス」になりかねない、と少し苦言を呈したい。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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