ファルコン9 v1.1ロケット、初打ち上げに成功

2013年10月2日 19:00

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記事提供元:sorae.jp

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  スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)社は9月29日、ヴァンデンバーグ空軍基地から、カナダ宇宙庁のカシオペなど、7機の人工衛星を搭載したファルコン9 バージョン1.1(v1.1)ロケットの打ち上げを実施した。今回が初打ち上げとなったファルコン9 v1.1は、その名前とは裏腹に、以前までのファルコン9から大きく進化を遂げた革新的なロケットで、今後、ドラゴン補給船や商業衛星、そして有人宇宙船の打ち上げなどでの活躍が期待されており、世界の他のロケットにとって強力なライバルとして君臨することになる。

  ファルコン9 v1.1は太平洋夏時間9月29日9時ちょうど(日本時間9月30日0時ちょうど)、カリフォルニア州にあるヴァンデンバーグ空軍基地のSLC-4Eから離昇、その17分45秒後にカシオペを分離、そして21分25秒後までに搭載していたすべての衛星を軌道に投入し、打ち上げは成功した。

  ファルコン9 v1.1はスペースX社が開発した新型ロケットで、従来のファルコン9に比べて打ち上げ能力や信頼性が向上、また製造方法を見直すことでコストダウンも図られた、まったくの新型といっても良い機体になっている。

  打ち上げ能力は地球低軌道に約13t、静止トランスファー軌道に約4.9tで、従来のファルコン9はそれぞれ約10tと約4.6tであり、その増加具合が伺える。

  各段に使用されるロケットエンジンは、これまでのマーリン1Cから、より強力なマーリン1Dへと換装された。マーリン1Dは推力の調節(スロットリング)機能を持っており、飛行時の負荷を低減させたり、またロケットを地上に着陸させたりといった芸当が可能になる。また第1段のエンジンの配置も、これまでの縦横それぞれ3基ずつ、田の字のように並べる方式から、オクタウェブと呼ばれる、8基を円形状に並べ、その中心に9基目を配置する方式に見直された。

  第1段と第2段の推進剤タンクはともに、推進剤の搭載量を増やすために大きく延長されており、そのためロケットの外見はとても細長い、華奢な姿になった。数字で表すと全長68.4m、直径3.66mで、日本のH-IIAロケットが全長52m、直径4mであることを考えると、その細長さは際立っている。また、第1段と第2段に搭載されている電子機器も新しくなり、とりわけ第1段に搭載されたコンピューターは、回収のために地上に帰還できるよう、自律した飛行を可能にしている。

  現在、スペースX社はファルコン9-Rと呼ばれる再使用ロケットの開発を進めており、第1段を回収するための技術は今後にとって必要となる。今回の打ち上げでも第1段の回収が試みられ、エンジンの再点火には成功したが、その後スピン状態に陥りエンジンが停止、太平洋への軟着水は果たせなかった。スペースX社では、来年2月に予定されている打ち上げで、再び回収実験を行うとしている。

  また衛星分離後に第2段エンジンの再点火も試みられた。これは静止衛星の打ち上げのために必要となるもので、しかしこちらは点火自体に失敗した。ファルコン9 v1.1を使った静止衛星の打ち上げは今年の10月末に予定されており、ロケットもすでに射場に到着しているが、今回の問題が解決されるまで打ち上げは延期される可能性がある。

  スペースX社が明かしているところによれば、ファルコン9 v1.1の打ち上げ費用は5650万ドル(約56億円)で、再使用が可能となるファルコン9-Rが実用化されればさらに安価になるだろう。また打ち上げを重ねて信頼性も確立できれば、アリアン5やプロトン、H-IIAやその後継機といった世界の同規模のロケットにとっては、太刀打ちすることすら難しい強力なライバルになりうる。

  今回搭載された衛星は全部で7機で、そのうち主衛星はカナダ宇宙庁のカシオペである。カシオペは直径1.8m、全長1.4m、質量481kgほどの小型衛星で、太陽風が地球の電離層に与える影響の観測や、新しい衛星通信技術の実証を行う。

  その他はPOPACS 1、POPACS 2、POPACS 3、DANDE、そしてCUSat 1、CUSat 2の6機で、POPACSは地球の上層大気の密度を、DANDEは低軌道における衛星への空気抵抗の度合いを計測、CUSatはミリメートル単位での測位を可能にする、新しいGPS技術の実証を行う。

 ■SpaceX | Launch Central
http://www.spacex.com/webcast/

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