「鳥人間コンテスト」の危うさ、OBが指摘

2013年9月6日 08:00

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記事提供元:スラド

あるAnonymous Coward 曰く、 毎年の風物詩ともいえる読売テレビ主催の「鳥人間コンテスト」について、実際に過去に参加し、現在もOBとして現役世代を支える立場の大貫剛氏が、その危うさについて自身のブログで警鐘を鳴らしている。

 大貫氏によれば、「鳥人間コンテスト」という「番組」と「大会」が別のものであり、事故については大会出場者の自主責任であるという一般的な見方は間違いであり、『大会運営全体が読売テレビの「視聴者参加型番組」の制作であり、大会参加者にはほとんど自主的な権限がない』と指摘。過去の事故についても読売テレビの「お願い」より公表されないままに終わっているとしている。

 実際に、過去の事故についても2007年に起こった事故の訴訟について、本年6月に「女性自身」誌で『鳥人間コンテストを提訴「落下の衝撃で動けない身体に…」』という報道があるまでは公にされたケースはこれまでほとんどなく、大貫氏によれば2006年にも後遺症を伴う大事故はすでに発生しているが、読売テレビの意向によって公開されていないとされている。ただし、女性自身で取り上げられた2007年の事故の場合は、そもそも事故の最終的な報告が読売テレビに伝えられておらず、読売テレビが事態を把握したのは2011年だったという。

 大貫氏はこれまでにも「鳥人間コンテストの事故について、鳥人間の立場から考える」などの指摘を行っている。そこでは女性自身誌の報道にもあった訴訟の原因となった事故について『鳥人間は「乗ってもらった」』ものであり『機体に関する責任はパイロットにはない』『普通の飛行機には安全基準があり、パイロットは点検項目をチェックするが、鳥人間にはそれはない』と、「鳥人間コンテスト」におけるパイロットの特殊性を指摘。事故におけるパイロットの自己責任論を否定している。

 鳥人間コンテストにおけるレギュレーションが、読売テレビと参加者の間において交わされる事実上の秘密保持契約として機能しており非公開であること、さらにそれを主要因として事故についての原因の公表がなされず、また参加団体が学生を中心としている事もあり、安全に対するノウハウが十分に周知されず、継承もされにくいという事が、事故が起こる可能性を低める事ができない原因と考えられる。

 実際運営上、「飛ばなくてはならない」というレギュレーションがあるという話もあり、発進台に登った後で機体の損傷が発覚しても、とにかく離陸をしなければならないという状況であるという証言もある。今年も一部機体が、テレビ越しにも見て取れる程度に損傷した状態で離陸した機体もあり(東北大学「Windnauts」の機体が、翼に明確な損傷を認めながら飛行を強行した)、パイロットの安全が本当に配慮されていると考えてよいかは非常に難しいところなのではないかと思われる。

 「鳥人間コンテスト」は、工学系の人間にとっても、また一般の人間にとっても、一つの大きなイベントである事には間違いはないと思う。であるからこそ、安全な運営を行うために、主催者側も、参加側も、また、そのイベントを消費する側である視聴者も、考えなくてはならない事があるのではないだろうか。

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