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本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第16回 給与制度に関する話(2)(1/2)
今回も、「給与制度」を検討する上での注意点について、特に検討を進める上で見逃しがちなポイントを挙げてみました。
■検討メンバーでは認識しづらい支払い能力や給与原資の問題
給与制度を議論する際によく感じるのは、「評価が高い人により多く配分する」というようなインセンティブの話題が中心になってしまい、自社における実際の支払い能力についてはあまり考慮していない場合が結構多いということです。もちろんそれぞれの会社によって社内の共有認識は違うので一概には言えませんが、個々の給与額のメリハリのつけ方に関する話題が中心になっているように思います。
特に現場のマネージャークラスなどと議論すると、「優秀な人材をつなぎとめるためには年収アップが必要で、世間相場を考えると自社の○○クラスは○○円くらいの上乗せが必要だ」などという話が出てきますが、そこには“自社の支払い能力”“給与原資”という視点はあまりありません。
はっきり言って、給与原資が同じであれば、急に大きな変化はできません。そんな中で「できた人に多く配分する」ということはイコール「できなかった人から削る」ということですが、そのあたりはあまり視野に入っていないことが多いと感じます。実際に制度を運用する上でも、上げたい人はいっぱいいても、下げることはそこまではできないことがほとんどです。
ただ、こういう認識不足にはやむを得ない面もあります。例えば給与の総額や過去からの昇給率といった全体がわかる情報を、社員に向けて細かく開示しているケースは一般的には少なく、全社の給与実態を把握しているのは、経営者、役員、人事部門など、一部の人間だけであることがほとんどです。他の社員には、実態把握できるだけの情報がないわけですから、意識しろということにも無理があります。
そうはいっても、給与制度を検討する上で“現状の給与支払い状況”を把握しておくことは、絶対に必要なことです。何でもかんでもオープンにできる情報ではありませんが、検討メンバーの中では、少なくとも給与制度の現状を把握できる材料を、人事部門などが主導して提供してできるだけ認識共有を図った上で、より全体状況を把握している経営者、役員、人事部門などが議論をリードしていくことが必要になってくるでしょう。
また私の経験では、本来は全体状況を一番理解しているはずの経営者が、支払い能力を過小に見たり(単なるケチ?自分の財布感覚?)、過大に見たり(社員に対する見栄?業績見込みの甘さ?)ということもありました。
まずは、自社の支払い能力に見合った仕組みでなければ意味がないということは心得ておくべきでしょう。
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