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■法律的な観点も意識しておくこと
給与制度は、人事制度の他の柱である等級制度や評価制度などとは少し異なった捉え方が必要です。それは給与が“基本的な労働条件そのもの”だということです。手当類の定義、時間外単価の算出方法、最低賃金、その他法律上の縛りがいろいろあります。給与が減るということについても、客観的な基準に基づく評価によるものなどでなければ、賃金不払いのトラブルになる可能性もあります。
ただ、給与制度を検討する上では、この法律に関する観点もついつい置き去りにされがちなところです。特に中小企業の場合、労働法規に関する意識が希薄なことが往々にして見受けられ、中には残業代の算出が法律に合致していなかっていたり、客観性がない評価で給与額を決められていたりということがまだまだあります。そしてその現状をベースにインセンティブや評価による配分方法の議論をしてしまうので、法的な不備がそのまま温存されてしまうこともあります。
評価反映、インセンティブの議論の前に、法律を守った上での仕組みでなければならないことを、しっかり意識した上で検討を進めることが必要です。このあたりも人事部門などが法律を踏まえて検討をリードしていくことが必要であろうと思います。
■移行方法を考慮した議論を
前に述べた通り、給与制度は基本的な労働条件そのものであり、特に減額という形での急変には様々な制約があります。また法的には問題がなくても、社員のモチベーション、さらには生活そのものにも多大な影響を及ぼします。こんなことから、給与制度はその制度移行についても詳細に詰めておく必要があります。しかし実際には、あまり重視されないことが多い部分でもあります。
移行方法に向けた手法を、俗な表現では短期間で一気に移行を完了してしまうハードランディング、時間をかけて少しずつ移行していくソフトランディングというような言い方をします。一般的な進め方としては、数年の時間をかけて徐々に移行を進めるソフトランディングが主流ですが、移行のために余分に給与原資が必要になったり、時間がかかることは悪平等との考え方があったりして、最近は多少の軋轢や争いを生んだり、モチベーションに影響があっても構わないとばかりに、ハードランディングで一気に制度を変えてしまう企業もあります。激変緩和の移行措置は考えないということです。
制度移行に関しては、どんな方法をとったとしても何らかの不満は出てきますが、あくまで私の経験では、あまり急いでことを進めると、人材の流出傾向が増えてくるという感覚があります。これは制度移行に伴って不利益を被る人だけでなく、特に影響がなかった人やどちらかといえば恩恵があった人まで様々です。当事者にいろいろ話を聞いていくと、「こういうやり方をしてしまうんだ・・・」「いつかは自分かも・・・」というように、会社と社員の間の信頼関係が緩やかですが少しずつ崩れていってしまっている印象でした。
人の心はお金だけでは動きませんが、お金の恨みということも確かにあります。移行方法についてはどんな方法を取るにしても、社員感情などを良く考えて、慎重にストーリーを検討しておくことをお勧めします。
次回も給与制度についてのお話です。
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