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日本の技術が拓く、新しい宇宙開発市場
種子島宇宙センターで6月19日、8月4日に打ち上げ予定の宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機の機体が報道機関に公開され、話題になっている。
宇宙ステーション補給機「こうのとり」(H-II Transfer Vehicle: HTV)は、日本が開発・運用している国際宇宙ステーション(ISS)へ補給物資を運ぶための無人の宇宙船。独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を行い、三菱重工業<7011>がH-IIBロケットの打上げ業務を担当している。
三菱重工業では昨年7月のH-IIB_3号機の打上げ成功を受け、9月からH-IIBロケットの打上げ輸送サービス事業を開始しており、今回の4号機以降はJAXAが実施する安全確認、地上安全確保、飛行安全確認などの業務と飛行データの取得に関わる業務を除いた、製造・打上げに関するすべての業務を受託するとしている。
同社では今後拡大が見通される宇宙開発事業に対し、積極的な市場開拓を目指しており、H-IIA・H-IIBロケットに次ぐ次世代のロケットとして、小型貨物から大型貨物まで広範囲な打上げ需要に容易に対応できるロケットファミリー化構想を検討している。とくに同社がJAXAと当社が共同開発しているH-IIAロケットとH-IIBロケットは、2009年の初号機から3機連続で打上げに成功している日本の基幹ロケットだ。
これまで3機とも、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の打上げにのみ使われてきたが、静止遷移軌道への衛星打上げ能力が8トンもあることから、2基の中型衛星を同時に打ち上げたり、大型化の傾向にある通信用衛星などにも対応できる技術として、打上げ輸送サービス事業の可能性を国内外にアピールしたい考えのようだ。
また、「こうのとり」4号機にはもうひとつ、話題の技術が搭乗する。
その技術とは、電通<4324>と東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車<7203>が共同で、JAXAの協力のもとに進めてきた「KIBO ROBOT PROJECT」が開発した人型ロボット「KIROBO」だ。
身長34センチ、重さ約1キロの小型ロボットKIROBOは、音声認識によって会話機能などを備える最先端のロボットで、宇宙飛行士の若田光一氏の相棒として乗り込み、世界初となる宇宙での日常的な会話実験に挑む予定だ。プロジェクトチームも、ロボットと共生する未来を宇宙から世界に発信することに意欲を見せているように、世界的にも注目が集まっている。
宇宙開発といえば、これまでは一般的に巨額の費用を投資して夢を追いかける事業のようなイメージをもたれていた部分も大きかった。
しかし、三菱重工業が目指す、新興国に対する衛星輸送サービスを中心にした宇宙インフラパッケージ輸出など、ここにきてようやく、ビジネスの市場としての形が見えてきたのではないだろうか。「こうのとり」だけに、日本に新しいビジネスモデルの息吹を運んできてくれるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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