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どうして私たちは悲しい音楽を聴くのだろうか?
仕事が一段落すると筆者はまずコーヒーをいれながら、自分の音楽ファイルからその日の気分に合わせたBGMをチョイスする。基本的にはクラシックかジャズ、時にはロックなど選ぶ。マーラーの交響曲第5番の第4楽章が好きでよく聴く。これは静かな単調の悲しげな曲である。しかし筆者はなにも悲しくなりたくてこの曲を選んでいるわけではない。物思いに耽りたいときに聴くことが多い。
理化学研究所と東京藝術大学は、悲しい音楽は悲しみだけでなくロマンチックな感情をも聴き手にもたらし、その作用が音楽家経験の有無に関係なく引き起こされることを実証したと発表した。これは、「聴いた音楽を悲しい音楽と判断すること」と「音楽を聴いて実際に悲しみを体験すること」が別であることを示していて、「なぜ私たちが悲しい音楽をあえて聴くのか」について考える重要な手がかりになるとしている。
悲しい音楽や悲劇は、鑑賞者に悲しみをもたらすと考えられていて、一般に感情研究の分野では、悲しみは不快な感情であると分類されている。これを前提とすると、「なぜ私たちは不快な感情をもたらす作品をあえて鑑賞するのか」という疑問が生じてくる。そこで研究グループは、既存曲の一部を抜粋して、悲しい音楽とされる短調で構成された30秒程度の曲に編集、18歳~46歳の実験参加者44人(男性19人、女性25人)にまず聴いてもらい、鑑賞後に「一般的に多くの人は、この音楽を聞いてどう感じると思いますか?」「あなたは、この音楽を聴いてどう感じましたか?」と質問し、それぞれに“悲しい”、“愛おしい”、“浮かれた”など62種類の感情を表す用語とその強度(0~4)を尋ねた。
その結果、実験参加者は聴いた曲を強い悲しみの曲であると判断したものの、自分自身ではそれほどの悲しみを感じておらず、ロマンチックな感情など“快の感情”も感じていたことがわかった。今回の成果は、私たちが悲しい音楽を聴こうとする行動を解明する手がかりになるとともに、芸術が表現している感情を代理的に体験する感情「代理感情」という新しい概念を導くものだとしている。
この研究の成果は、私たちにとって音楽がいかに重要であるかを示唆してくれるだけではなく、音楽の持つ可能性を改めて認識させられる。今後の研究に大いに期待していきたい。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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