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学校から紙のノートがなくなる日
勉強にはノートが必要だ。PCがどれだけ発達しても「書く」という行為に勝る学習法はない。板書や講義の内容を書き留めたり、思いついたことをメモしたり、繰り返し書くことで漢字や単語などを覚えたり。しかし、それに使うノートが「紙」でできているという常識は、「電子ペーパー」によって、もはや過去のものとなりそうだ。
電子ペーパーという技術は、何も新しいものではなく、さかのぼれば1970年代にはすでに開発されていた。開発者の名はニック・シェリドン。米国ゼロックス社の研究所の職員である。彼の開発した「Gyricon」と呼ばれる技術が、世界で最初の電子ペーパーだといわれている。
液晶やプラズマなどのディスプレイと電子ペーパーが決定的に違うのは、「自ら発光するわけではない」ということだ。例えば、タカラトミー<7867>が発売して、ロングランでヒットしている「せんせい」シリーズなどは、仕込んだ砂鉄を磁石で動かすことによって、絵や文字を書くことができるが、電子ペーパーはそれが電気仕掛けになったものと考えるとわかりやすい。
E Ink社が開発した「マイクロカプセル型電気泳動方式」という技術は、プラスチックの基材面にコーティングされたマイクロカプセルの中に、正に帯電した白い顔料と負に帯電した黒い顔料が入っていて、一つ一つの電極にかける電圧を細かくコントロールすることで、白と黒を表示し分ける。解像度は電極の細かさで決まり、グレーの中間調も表示可能。
自ら発光しないことで、紙のように見やすいので、電子ペーパーと呼ばれ、コントラストは新聞紙より高く、水平に近い角度からも文字が読めるほど視野角も広い。
また、書き換え時以外に電力を消費しない、もしくは極小で済むので、液晶意などと比べても消費電力が圧倒的に少ない。日本でこの電子ペーパーにいち早く目をつけて注目されたのが、ソニー<6758>だ。
2004年に発売されたソニーの電子書籍端末「LIBRIe」は、E Ink電子ペーパーディスプレイを搭載した世界初の製品として注目を集めたが、電子書籍市場が一般的でなかったことや、コンテンツが少いこと、レンタルのみであること、切り替え速度が遅いことなど、様々な原因で伸び悩み、07年には生産を中止することとなった。しかし、その姉妹機としてアメリカで展開された電子書籍「Reader」が好評を得、10年には日本国内でも販売されるようになり、今に至っている。
そして、5月15~17日に東京ビッグサイトで開催された「教育ITソリューションEXPO」の席上で、電子ペーパーにこだわりを持つソニーが参考展示していたA4サイズ13.3型の電子ペーパー端末の試作機が注目を集めていた。
この電子ペーパー端末は大学やオフィス向けに開発されたもので、E Inkの「Mobius」と呼ばれる新技術を採用している。解像度は1200×1600ドット。ファイル形式はPDFにも対応。操作は指によるタッチかペンを用いて行う。内蔵メモリは4GB。重量は358g。駆動時間はなんと最長3週間という。表面には、割れにくいプラスチックを採用している。もちろん、PCなどとの連携もでき、microSDカードスロットとMicro USB端子を使ってデータのやりとりができるのはもちろん、無線LANにも対応しており、サーバを介してファイルを共有するアプリケーションも提供される予定だ。
今秋10月から、早稲田大学、立命館大学、法政大学と連携し、講義で使用する実証実験を行い、今年度中に学校や教育機関にむけて商品化を目指すという。
折りしも、米Amazonが現地時間の5月13日、Samsungが2011年に買収して保有していたLiquavistaのカラー電子ペーパー技術を買収したことを認めたばかり。いよいよ本格的に、電子ペーパー端末の時代が到来するかもしれない。(編集担当:藤原伊織)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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