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マイナンバー導入で、国民の生活はどう変わる?
落語の演目のひとつに「ぜんざい公社」というものがある。
これはある男が、たった一杯の甘いぜんざいを食すために、大量の書類に捺印させられたり、窓口をたらい回しにされたりする、公共機関の手続きの煩わしさを皮肉った噺だが、これが笑いになるのは、実際に「あるある」として、多くの人が似たような経験をし、辟易した覚えがあるからだろう。
ついに5月9日、すべての国民に番号を割り振る「共通番号制度」導入のための法案が衆議院本会議で自民・公明両党と、民主党、日本維新の会、みんなの党などの賛成多数で可決され、参議院に送られた。政府は2016年から制度の運用を目指している。
共通番号制度、いわゆるマイナンバー制度とは、国民一人ひとりに番号をふり、住所や生年月日、医療費などといった個人情報を1つの番号で管理するシステムのことで、年金や失業保険などの給付申請や受け取り、納税や確定申告などの際、その番号を利用することで書類の添付が不要になるなど、手続きを大幅に簡略化するものだ。
しかし、この制度が導入されることで実際に私たちの生活は、具体的にどのように変わるのだろうか。まずプラス面としては、何よりも申請や手続きの簡略化が挙げられる。
これまで雑多だった公的な証明証書が、これからはマイナンバーのカード1枚で済むことになる。年金も健康保険も介護保険も、このカードにまとめられる。給付の申請や税の確定申告、児童扶養手当の申請などの各種申請の手続きも、窓口へのカード提示のみで可能になる。さらには、自宅のパソコンからも手続きできるなど、様々な面で簡略化される。
役所の手続きだけでなく、医療の受給や管理でも活用が期待されている。
たとえば、今までにどんな病気を患って、どんな診療を受けたか、薬の服用履歴などの情報まで管理できるようになる。全国どこに行っても改めて検査する必要がなくなるので非常に便利だ。また、現状では、高額な医療等を受けた場合、本人が一旦、自己負担額を超える金額を立て替えていたが、これからはその必要はなくなる。
また、最近話題となっている低所得者を偽装した生活保護費の不正受給など、社会保障サービスの不正防止も一役買うことが期待されている。マイナンバー制を導入することにより、これまで以上に所得や社会保障サービスの受給の実態を正確につかむことができるので、不正受給だけでなく、個人の収入に応じた税金の負担や給付が受けられるようにもなるだろう。
さらに制度導入によって、マイナンバー特需を期待する声もある。
制度が正式に導入されれば当然、政府や地方自治体、企業からシステム構築や機器販売の大幅な需要が見込めるため、情報技術系の企業は対応に向けて早くも動き出している。大和証券では、マイナンバーの民間活用が法律で認められた場合、関連する市場は最大3兆円程度と推計している。
一方、マイナンバー制度の導入はリスクが大き過ぎると懸念する声も多い。
個人情報の漏洩や第三者による悪用、プライバシー保護の観点での問題が指摘される中、これに対する政府の対応や対策は充分とは言い切れない。第三者機関によるチェックや罰則、膨大なデータに対応できる体制など、累積する問題や課題が山積みなのが現状だ。
実際、すでに同様の制度を導入している海外諸国では問題が多発している。
たとえば、この制度が広く普及しているアメリカでは詐欺被害が続発して大きな問題になっているが、未だに抜本的な改善策を見出せていない。また、イギリスでも、制度を導入しているものの、個人情報の管理や倫理上の観点から、廃止を検討しているという。実際問題として、何か新しいこと、便利なことを導入しようとすると、何かしらの問題が起こるのは当然のこと。メリットとともに新しいリスクが生まれるのも世の常だ。
確かに、マイナンバー制度は便利な制度である。しかし、使い勝手の良いシステムとして定着させるためには、情報管理を徹底する施策も同時に進めていく必要があるだろう。(編集担当:藤原伊織)
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