本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第13回 評価制度の検討(6)(2/2)

2013年5月17日 14:09

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■「公平性」と「透明性」と「納得性」の関係

 評価制度における重要な要素として、「公平性」「透明性」「納得性」の3つがいわれます。これらがすべて重要なことには異論ありませんが、評価制度を運用していく上で、私はすべてが同列ではないと思っています。

 例えば、あるカリスマ社長がいて、その社長がある社員を評価した結果がB評価だったとして、その理由を社員には一切説明しなかった、もしくは「俺がBと言ったらBなんだ!」なんて程度の一方的なものだったとします。

 これに対して社員は「社長にそう評価されたらその通りなんだろう」「あの人の目は確かだから間違いないだろう」などと思っていたとしたら、公平でも透明でもありませんが、納得はしています。

 逆にどんなに「公平性」を意識して取り組んでも、どんなに「透明性」を向上させても、それで「納得性」が高まるとは限りません。

 つまり、評価制度を成功させるには「納得性」が最も大事で、この「納得性」を高めるために、基準に基づいて公平に評価するという「公平性」と、評価過程や結果、理由を明らかにして、フィードバックや説明を行うというような「透明性」があるという考え方です。

 「公平性」と「透明性」は制度で対応できますが、「納得性」は制度だけで対応できる部分ではありません。各自の主観と言ってもいい部分であり、誰がどんなやり方をしたか、何を見せ、何を語ったかなど、運用時の対応に左右されます。

 このあたりを意識しないと、評価制度を検討する中で、評価する方法や評価プロセスでのエラーをなくすことなど、「公平性」「透明性」の部分ばかりが主眼になってしまい、肝心の「納得性」が高まらずに、制度運用がうまくいかないということになってしまいます。

 3つの要素の関係性は、あらためて意識しておくと良いと思います。

 次回も評価制度の留意事項についてのまとめです。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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