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時代に合った形に進化する庭の存在
先日行われたシンポジウム会場で挨拶をするアキュラホーム宮沢社長[写真拡大]
2010年に国土交通省が行った『住生活に関する国民アンケート~未来の「住まい」を考える』によると、「木造住宅での暮らし」について、全体の8割ほどが興味・関心を持っている、もしくは既に住んでいるという結果だった。
木造住宅が日本で好まれる理由には、“比較的安価である”“設計の自由度が高い”“風土に合っている”など、様々な理由が挙げられるが、何と言っても古来の木の温もりを身近に感じながら生活してきた日本人にとって、心の安らぎを与える空間として切っても切り離せない存在と認識している人が多いと思われる。
そして、この安らぎの空間にさらに高い住み心地を与えてくれるのが「庭」だ。一言に「庭」と言っても“坪庭”や“庭園”など、その役割や大きさもまちまちだが、住環境においては「家」との関係性を持つ外部空間としてなくてはならないものだ。現代では四季の風景を楽しむという風情ある空間というよりは、機能的で生活に直結するための空間という認識の方が一般的な考えに近いのかもしれない。
このように「庭」も時代の移り変わりによって、その立場を変えてきた。矢野経済研究所の調査によると、「庭」の使用方法として一般的とも言える「ガーデニング」の市場は昨今の「家庭菜園」ブームの影響もあり、植物分野の落ち込みをカバーして微増ではあるが、堅調な伸びを示している。「家庭菜園」は食育の一環としての部分や“緑のカーテン”普及による環境活動の部分もあり、高成長を続けている。
そんな近現代の「庭」と「木造住宅」との関係から住まいづくりを学ぶシンポジウムが先日行われた。今年で2回目を迎える「日本ぐらし館」主催の木造住宅の研究であるシンポジウムのテーマは「庭との関係に学ぶ木造住宅の未来」。著名な人たちを多数ゲストとして迎え、講演やパネルディスカッションが行われた会場は満員となるほどの盛況ぶりで、「庭」に対して様々な角度からの話が興味深く語られた。主題解説を行った京都大学・大学院教授の高田光雄氏は、“季節を楽しむ”“環境調整”“住みごたえ”など5つの項目を現代小住宅の作庭として挙げ、それぞれの役割を語った。また、このシンポジウムを共催する工務店ネットワーク「ジャーブネット」を主宰するアキュラホームの宮沢社長は「住み心地は住宅メーカーが住まい手に対して提供する一方通行なものだが、住まい手が参加してつくる庭(住まい)を『住みごたえ』として呼び、双方向のものであるという新しい発見があった」とコメントした。
前述の国交省のアンケート調査でも「エコ住宅」への興味・関心は85%ほどの人が持っており、今回のシンポジウムでも“環境調整”の解説では「庭」をエコ住宅の要素として捉えている部分もあったように、その関係性は時代に沿った新たな要素を加えながら、進化している。住生活を考える上で、「庭」の存在は風情を楽しむ、機能的に必要、趣味や生活としての役割の追求など、細分化され、それぞれに重要視されている存在となっている。(編集担当:北尾準)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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