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東京オリンピック招致、開催候補日とその理由に見る甘さ
東京2020オリンピック・パラリンピック招致支持率調査において、「賛成」が73%と前回実施から7%増となった[写真拡大]
東京2020オリンピック・パラリンピック招致支持率調査において、「賛成」が73%と前回実施から7%増となり、にわかに盛り上がる招致委員会。2016招致の際の反省点を活かし前回よりも早い段階からアピールを開始し、2月19日には開催都市決定200 日前記念イベントと称してアスリートによるトークショーなども予定、「この感動を次は、ニッポンで!」と書かれたポスターもあらゆる場面で登場するなど、積極的な活動が目につくようになってきている。この招致活動は成功し、招致が実現した際には、大会自体も成功裏に終えることができるのであろうか。申請ファイルからは、開催候補日の項目を見るだけでも、どこか考えの甘さを感じずにはいられない。
招致委員会がオリンピック競技大会の競技日程として提案しているのが、2020年7月24日の開会式に続く7月25日から8月9日までの16日間、閉会式は8月9日に実施し、パラリンピック競技大会を8月25日から9月6日で開催とするというものである。従来の夏季オリンピックと大差ない日程ではあるが、申請ファイルではその理由の第一に「この時期の快適な夏の気候は、アスリートにとって理想的である」としている。高温多湿なこの時期が本当にアスリートにとって本当に理想的なのであろうか。2007年に大阪で実施された世界陸上は8月25日から9月2日の日程で実施されたが、ミストなどの対策が取られていたにも関わらず、熱中症や脱水症状などの症状が出た選手もいるという。東京は大阪よりも比較的過ごしやすいとはいえ、暑さ対策が最重要課題となるような環境は理想的とは言えないであろう。さらに近年は、都市部においてゲリラ豪雨が増加していることを考慮すれば、尚更ではないだろうか。
対立候補地の同時期の気候面をみると、マドリードは7月から8月の大半にかけて気温が頻繁に40度まで上がり、夜まで気温が下がらない。この点は東京に軍配があがるであろうが、同時期に雨はほとんど降らないというから、一長一短である。もう一方の対立候補地であるイスタンブールは、強い日差しの晴天が続くというものの、平均気温は東京よりも低く、さらに同時期の降水量は圧倒的に少なく湿度も低いというから、気候面ではイスタンブールに軍配が上がるのではないだろうか。
その他、同時期は「学校の夏期休暇期間であるため、子どもやボランティアが参加しやすく、公共交通機関が混雑しない」ことも理由として挙げられている。確かに夏休み期間中であることは、観客動員数増加に寄与するであろうが、例年でさえ観光客数が増加する時期であるだけ、交通機関が混雑する可能性は高まる。公共交通機関が混雑しないという予測の下で準備・運営を進めれば、大会が成功する確率は下がるのではないだろうか。
過去の開催地、他の候補地においても、完全にアスリートにとって理想的な環境であったわけではない。大会を招致する為の申請ファイルであるから、美辞が並ぶのも当然であろう。しかし、あまりにも実態とかけ離れた内容では、招致に成功したとしても運営に失敗し、結果、東京のみならず日本全体の評価を下げかねない。オリンピックの招致が日本の経済活性化に繋がり、スポーツのすそ野を広げ、世界に日本をアピールする絶好の機会と出来るのであれば、招致するのも悪くないであろう。しかし、今回の申請ファイルからは、1964年大会に見た夢をもう一度見たい、招致さえすれば当時と同じような活気が湧くというだけの考えが見え隠れする。しっかりと現状を把握し、招致がゴールではなく、大会を成功させることを念頭においた活動を願たい。(編集担当:井畑学)
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