宇部興産、堺工場でナイロン原料の生産を停止 特別損失126億円を計上

2013年2月7日 10:44

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 宇部興産は5日、堺工場においてナイロンの原料であるカプロラクタムの生産を停止すると発表した。停止予定日は2014年3月末。

 宇部興産は、昭和30年に、繊維や樹脂用途として幅広く利用されるナイロンの原料であるカプロラクタムの製造・販売を開始し、品質の高さと安定供給力に対する顧客からの高い評価をもとに事業を拡大し、宇部、堺、スペイン、タイの4工場によるグローバルな供給体制を築いてきた。

 しかし、昨年に入り、世界景気の減速により需要の伸びが力強さを欠くなか、中国を中心として新規メーカーの参入や既存メーカーの増設が相次いだことでカプロラクタム市況は大きく崩れ、一方で原料となるベンゼンや副原料などの価格高騰もあり、カプロラクタム事業の採算は急速に悪化。同社の製造拠点のなかでも堺工場のカプロラクタム製造設備は、製法やLNGに依存する副原料・スチーム等のユーティリティにおいて、他の3工場と比べて製造コストが高く競争力に劣るため、かねてより同社ではさまざまな収益改善策を検討、実施してきた。

 しかし、昨今の事業環境の変化はこれら改善策によって対応可能なレベルを超えており、将来にわたって採算改善が見込みがたい状況であることから、同設備については一定期間の操業後に停止し、設備廃棄することが事業全体の競争力強化のためには最善との判断に至った。また、同設備停止に伴い、関連する同工場内の誘導品等の製造設備も合わせて停止し、廃棄する。

 今後、堺工場はリチウムイオン電池用の材料など、付加価値の高い機能材を中心とする生産拠点として強化を図る。また、従業員の雇用は、堺工場で今後生産拡大を予定しているリチウムイオン電池用セパレーターをはじめとする機能材分野への配転などにより確保する。

 なお、同設備停止に伴い、2013年3月期決算において連結及び個別で126億円の特別損失を計上する予定。この特別損失には固定資産の減損損失のほか、現時点で見込まれる既存設備の廃棄に伴う諸費用などを全て含んでいる。

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