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本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第10回 評価制度の検討(3)(2/2)
●プロセスを見ることの重要性
数値化しづらい要素ということでは前に述べた点と共通しますが、人間の心情として、「他人から認められたい」という気持ちは誰もが持っています。良い結果が出ていればその結果で認められたいし、結果が出ていなくても取り組んだプロセスや取り組み姿勢、がんばりといった部分を認めて欲しいものです。評価するという事には、過去を振り返るとともに、将来の目標に向けた動機づけという要素もあります。
上の立場になるほど結果を問われることは当然として、若手社員や育成段階の者については、仕事のプロセスにもしっかり注目して評価するという事が、本人のやる気や向上心を促すためにも必要であろうと思います。これを評価項目の上でもはっきり示しておくことが望ましいでしょう。
●企業理念、重視している価値観、重点事項とのリンク
どんな会社でも、それぞれ大切にしている理念や価値観があるはずです。経営理念として明確に示されているものもあるでしょうし、社風として歴史の中で育まれてきたこともあるでしょう。それが「顧客第一」ならば評価項目にも顧客サービスに関わるものがあるべきですし、「技術力」なら技術スキルに関わる評価項目、「社会貢献」ならそれに関わる評価項目があってしかるべきです。
これはある有名企業でのお話ですが、成果主義を強めたことによって、みんなが目先の数字ばかりを追うようになり、それまで重視していた人材育成がおろそかになってしまったそうで、その状況を改善するために、特に課長クラスの評価項目に「人材育成」に関するものを追加したそうです。
あらためて「人材育成」への取り組みを促す会社からのメッセージともいえますが、この例のように、会社として重視している行動、能力、取り組み事項といったものは、評価項目ともリンクさせることを意識しておくと良いと思います。
●個人的な主観に振り回されない項目設定と定義
最後に、これは中小企業特有かもしれませんが、組織の規模が小さい場合、特に経営者や役員クラスなど、上位者の個人的な主観が評価項目に強く反映されてしまう場合があります。典型的なものでは「朝早くから来て頑張っている」「いつも定時退社で仕事をしていない」「休日出勤も嫌がらずにこなしているから良い」というようなものです。
朝早いからといって頑張っているとは限らないし、定時退社だから仕事をしていない訳ではないし、休日出勤は好ましいことばかりではないはずですが、「責任感」や「積極性」といったあいまいさを含む評価項目の言葉を自分の解釈で捉え、自分自身の職業観や働き方に対する思い込み(偏見?)に基づいて評価しようとします。
これを避けるには、やはり該当する評価項目に対して、ある程度具体的な定義を事前に定めておくということになります。この定義も細かく決めすぎると実態に合いづらくなり、大ざっぱすぎると意味が無くなってしまいます。
自社に起こりがちな主観というのはある程度想定できるはずなので、それに基づいて定義を決めていくことが良いと思います。その後運用する中で、どうしても実態にそぐわない点が出てくることはありますので、多少の試行錯誤をする覚悟は必要であろうと思います。
次回も引き続き、評価制度を検討する上での留意事項をご説明していきます。
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