3年ぶりに高水準となった早期退職者数、厳しくなる一方の若年者雇用

2013年1月7日 12:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 東京商工リサーチの調査によると、2012年の上場企業の希望・早期退職者募集は、12月7日までに62社が判明し、3年ぶりに前年を上回った。総募集人数も2010年の12223人、2011年の8623人を上回りって17700人となっており、リーマンショックに揺れた2009年の22950人に迫る勢いとなっている。

 前年比倍増となった要因は、日本電気<6701>やシャープ<6753>、ルネサスエレクトロニクス<6723>などの大手による募集が大きい。NECだけでも携帯電話事業で約500人減、電子部品事業でも約3000人の人員を削減する。また、シャープも2000人程度の希望退職者を募集。募集人数を大幅に上回る2960人の応募があったため締め切りを早め、12月15日をもって退職する運びとなった。ルネサスエレクトロニクスに関しても、早期退職優遇制度の募集に対して7446人の応募があり、10月31日をもって全員が退職している。これ以降も、小森コーポレーション<6349>や東京機械製作所<6335>が希望退職者の追加募集を実施すると報じられるなど、希望退職者を募る企業は後を絶たない。

 こうした中、来年四月からは高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律)が施行される。実質的に65歳定年制を推奨するこの制度には、専門的な知識や技術、取引先との繋がりなどが、戦力として期待される一方、企業の人件費が増え、若年者の雇用が抑制されるとの懸念も叫ばれている。さらには、外国人労働者の数も増え続けており、若年者の雇用環境は厳しくなる一方である。

 高年齢者雇用安定法の主目的は、定年から年金受給開始までの5年間のブランクを埋めるものである。しかし、多くの企業がシニア層をターゲットとして成長戦略を立てており、今後の消費を牽引するものとも見られている。それだけ他の世代と比べて十分な資力があるということであろう。となると、若年者の雇用を犠牲にしてまで実施する施策が必要なのかと疑問を抱いてしまう。他の年代が横ばいで推移しているにも限らず、30歳未満のエンゲル係数は2008年以降、顕著に上昇しており、ほぼ10年間で2ポイント程上がっている。若年世帯ほど日常生活が厳しくなっているという一つの指標であろう。シニア層が消費し、若年層に資金が回るならまだいい。しかし、例えば年金を受給しながら物価の安い海外で余生を楽しむようなことだけは、避けて欲しいと願う。

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