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最新の知見に基づく、天井耐震診断手法開発
昨年の東日本大震災では、少なくとも2000件の天井崩落が発生したという。国土交通省はこうした被害を踏まえ、吊り天井を採用している全国の大規模物件1万9000件を本年3月に調査。結果、その2割超で構造的な問題が見つかったと発表している。吊り天井は、体育館や学校、生産施設、展示場など様々な用途の施設に採用されており、比較的人の多く集まる場所であるため、崩落が発生した場合には大きな人的・物的被害があると予測され、その対策が急務となっている。
しかし、従来の天井耐震診断は、国土交通省監修の手引きや日本建築センター発行のガイドライン、建築学会指針などにもとづき適否判断をしており、基準が統一されていなかった。さらに、東日本大震災を経て基準の見直しが行われていたことから、最新の知見にもとづく診断方法の提案が求められていた。
こうした中、清水建設 <1803> が、既存吊り天井の耐震性能を短期間・低コストで診断できる天井耐震診断手法「ラッカノン」を開発。1万m2程度の施設なら、1日で診断が終了し、報告書・提案書の作成を含めても1~2週間で一連の作業が終了する。開発に当たっては、東日本大震災後に同社が実施した1500棟に及ぶ天井落下被害調査や耐震吊り天井の振動実験で得た、吊元の構造や吊ボルトの接合状況、部材接合部の耐力、天井部材と設備との干渉による影響等に関する知見を集約・データベース化。それらを基に、診断担当者による差異が出ないよう、診断結果を記入する診断シートならびに、診断シートに記入する数値データ等を現地収集するための調査シートをそれぞれ作成し、診断手法を確立したという。
国土交通省が今年7月に示した建築物における天井脱落対策試案では、対象天井が高さ6m以上かつ200m2以上と極めて限定的になっているものの、東日本大震災ではそれ以外の天井も多く落下しており、天井の規模を問わず診断を行う必要がある。さらに、12月2日には、中日本高速道路が管理する中央高速自動車道笹子トンネル内の天井が落下する事故が発生。その原因が、天井を支えるアンカーボルトの腐食ではないかと見られている。こうした事態を受けて19日、国土交通省が、新幹線トンネル及び改定に敷設された鉄道トンネル内空のアンカーボルト等で添架している「架線を支持する下束等」の取り付け部のうち、トンネルを構築した後に取り付けた個所の緊急点検を指示するなど、天井に関する安全対策が急がれている。老朽化した建造物が増えつつある中、こうした安心・安全に対する技術開発がさらに活発化することを期待したい。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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