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■差をつけるだけが目的ではない
評価制度を語る上で、「同年齢、同じ社歴でも、年収で最大○百万円の差がつく」というような話をされることがあります。能力主義や実績主義であるということを強調したいのだと思います。
実際に制度を検討していく中でも、主に経営層から「もっと差がつくような制度にしたい」という要望が出て来ることがあります。もう少しよく聞くと「力のある者に厚く処遇したい」「結果を出している者に報いる制度にしたい」と言われることが多いです。
この気持ちは私も理解できますし、俗に言われる「悪平等」というものがあるのだとすれば、それは良い事ではありません。ただ、単に差がつくようになれば、それが解消されるわけではありません。
まず、どんな精緻な評価制度であっても、その差が本当に適切なのかは、結局は誰も説明できません。あくまで自社の価値観をもとに作った、今の仕組みによって評価するとそういう結果になったというだけです。100%の納得にはなかなかなりませんし、差がつく度合が大きくなればなるほど、よほど納得できる説明が得られない限り、社員の納得度は低くなっていきます。評価されない者がやる気を失っていくだけでなく、高評価を受けた者さえも、その評価が継続しないと不満を溜めていくというようなことがあります。
もう一点、人事制度の目的は「組織全体の業績を上げるために、人的資源を活性化すること」です。会社にはいろいろな人がいます。競争心がある人もない人も、熱い人も冷静な人も、出たがりも控えめも、派手も地味も千差万別です。そしてそのすべての人が会社としての戦力です。
ともすれば「差がつく」という形で競争心をあおることが、万人のやる気につながるように思いがちですが、競争が得意な人も苦手な人も、他人との差に興味が強い人も弱い人もいます。
もしも競争の苦手な人が多数の職場で、競い合うより落ち着いて協力し合う環境を作った方が組織として活性化するならば、あえて「差をつけない」という仕組みの方が望ましいという場合もあり得ます。
自社の価値観をしっかり見つめた上で、その価値観に基づいた仕組みに則って評価を行い、その結果として差がついたのならば良いと思いますが、初めから「差をつけること」が目的ではありません。
企業風土、仕事の進め方のスタイル、社員の性格傾向などの見極めも行った上で、本来の目的を念頭に置いて制度設計することをお勧めします。
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