本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第7回 等級制度の留意点(2)(2/3)

2012年10月25日 12:34

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■制度の運用も考慮すること
 等級制度をどんな構成にするかによって、実際に制度を運用する場面ではそれが大きな違いとなって表れてきます。

 どういうことかというと、例えば年功的な運用を弱めた制度にした場合、ランクアップに際しては昇格要件を設定し、それを満たしているかを判定するために、何らかの評価や審査という手続きが必要になります。

 審査の過程を通じて、在籍等級と担っている職務との適合性や適格性を測ったり、本人の意識づけを行うなど、動機づけする上では良い機会になりますが、審査期間を要しますし、審査に関わる人の時間や労力など、制度運用の負荷は高くなります。

 逆に年功的な運用が強い制度であれば、毎年一定のランクアップを基本にするので、毎年少しずつ進歩している実感を持たせることができ、制度の運用負荷はそれほどではありませんが、昇格、昇級のイベントとしての要素は弱まり、向上心の低下やマンネリに陥る恐れがあります。機械的に昇格させる意識が強くなることで、在籍等級で本来求められる役割と、実際に担っている仕事が乖離していく恐れもあります。

 これはある企業での事例ですが、できる限り年功的要素を排除した実力主義の制度にしたいということで、等級制度でも相応の審査基準や手続きを定めた仕組みとしましたが、実際に運用してみると想定以上に審査対象者が多く、制度の主旨通りの運用ができずに形骸化し、年功的な制度と変わらないか、ヘタをすればそれよりも悪いというような状況に陥ってしまいました。

 これは人事制度構築全体でも言える事ですが、制度の理念や構成、仕組みとともに、やはり制度の運用負荷や、自社の対応力といった部分も考慮しておいた方が良いでしょう。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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