IHI、世界初となる再生型燃料電池システムの民間航空機飛行実証に成功

2012年10月4日 19:03

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飛行実証で使用された再生型燃料電池システム(写真:IHI)

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 IHIとIHIエアロスペースは4日、米ボーイング社と共同で再生型燃料電池システムを民間航空機に搭載し、飛行実証することに成功したと発表した。なお、再生型燃料電池システムの飛行実証は世界初の試みとなる。

 再生型燃料電池は充電可能な燃料電池であり、エンジンとは独立して電力を供給することができる。また、副産物は水のみであるため、省エネルギー化、二酸化炭素排出削減を可能とし、航空機の環境負荷を低減することが可能。

 今回の飛行実証は、ボーイング社の環境対応技術実証を目的とした「ecoDemonstrator」計画の一環として、米シアトル近郊においてアメリカン・エアラインのボーイング737型機を用いて行われた。フライト試験では、航空機の離陸前から高度上昇中において燃料電池からの発電による電力供給を行い、巡航飛行時に航空機の電源を用いて充電を実施。その後、再度、発電-充電-発電のサイクルを行うことに成功している。

 再生型燃料電池の航空機適用技術は、経済産業省が公募した「航空機用先進システム基盤技術開発(航空機システム革新技術開発)」で採択されたプログラムを活用し、2009年度より研究を行ってきた。ここで得られた研究結果を、ボーイング社との共同研究でのフライト実証試験につなげることにより、今回の成功に至っている。

 今回の実証試験では、航空機という閉鎖空間に水素ガスを用いた燃料電池システムを搭載する必要があったため、飛行安全をどのように確保するかという部分が一番重要な課題だった。水素ガスを民間航空機に搭載するための基準が現状は存在しないため、航空機の安全性確保のための安全設計基準を検討し、安全性解析、システム設計をボーイング社と共同で繰り返して行った。同システムにおいては、航空機を安全に飛行させるためのバックアップを含め、各種安全機能が備えられていることが特徴となっている。

 IHIは、ジェットエンジンでは国内最大のシェアを有し、航空機装備品メーカーとしての経験は豊富。また、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と地上発電用燃料電池の研究開発を行った経験があり、IHIエアロスペースにおいてもJAXA(宇宙航空研究開発機構)と成層圏プラットフォーム飛行船プロジェクトの電源系開発の一環として再生型燃料電池の研究を進めてきており、今回 実証した再生型燃料電池システムの基礎技術になっている。

 IHIは、今回得られた経験をもとに、再生型燃料電池の小型化、大出力化の改良を進め、航空機の低燃費及び環境負荷低減に寄与する将来の民間航空機用補助電源の製品化に向けた検討を実施していく。

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