三菱重工、空気潤滑システムをフェリーに初搭載 省エネ効果を確認

2012年10月3日 21:03

印刷

フェリー波之上(写真:三菱重工業)

フェリー波之上(写真:三菱重工業)[写真拡大]

 三菱重工業は3日、泡の力で船体と水の抵抗を減らす「三菱空気潤滑システム(MALS:Mitsubishi Air Lubrication System)」をフェリーに初めて搭載し、5%以上の省エネ効果を確認したと発表した。今回の検証結果は、9月27日に就航したマルエーフェリー株式会社(本社:鹿児島県奄美市)の「フェリー波之上」の海上運転によるもの。これにより、高速・やせ型船に対する燃料消費および環境負荷の低減策としてもMALSの有効性が検証された。

 フェリー波之上は三菱重工の下関造船所で建造。全長145m、幅24m、喫水6.2m、総トン数8,072トンで、鹿児島-奄美-沖縄を航路とする。MALSは、ブロア(送風機)を使って船底から吹き出した空気が細かい気泡となって船底をカーペットのように覆うことで、航行時の船体の抵抗を減らすシステム。

 MALSは2010年に初めて日之出郵船向けモジュール運搬船「YAMATAI」と「YAMATO」に搭載し、優れた省エネ効果を確認している。三菱重工は同技術の適用範囲を拡大するため、技術的には困難と言われた平らな船底部が少ない高速・やせ型船を対象としたシステムを開発し、マルエーフェリーの協力のもとにフェリー波之上への搭載が実現した。

 海上運転による速力試験では、波高2.5~3mの悪条件ながら5%以上の燃費改善効果(推進馬力低減)が確認され、高速・やせ型船でも摩擦抵抗の低減効果が得られることが検証できた。これは、同船搭載の推進ディーゼル機関に新たに適用されたNOx(窒素酸化物)排出規制強化による燃費増加分を補うことができるレベル。また、空気がクッションの役目を果たすことで振動・騒音レベルも低減しており、乗り心地の向上にも一役買っている。

 今後は、フェリー波之上の実運航状況をフォローし、MALSの省エネ・CO2削減効果を確認していくという。

関連記事