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東芝、ゲリラ豪雨や竜巻を観測するための「フェーズドアレイ気象レーダ」を開発
大阪大学に設置されたフェーズドアレイ気象レーダ(写真:東芝)[写真拡大]
独立行政法人情報通信研究機構(NICT)、大阪大学、東芝は31日、ゲリラ豪雨や竜巻などを観測するための「フェーズドアレイ気象レーダ」の開発に成功し、大阪大学・吹田キャンパスにて試験観測を開始したと発表した。同レーダは、10秒間隔で隙間のない3次元降水分布を100mの分解能で観測することが可能で、将来的には突発的気象災害の監視や短時間予測に役立つことが期待されている。なお、今回の研究成果の一部はNICTの委託研究「次世代ドップラーレーダ技術の研究開発」により得られたもの。
近年、局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)や竜巻による甚大な被害が社会問題となっている。このような局所的で突発的な大気現象の詳細な構造や、前兆現象を直接観測するのに最も有効な手段は「気象レーダ」であるとされている。従来から、台風や低気圧、梅雨前線などによる降雨を観測するために、大型の「気象レーダ」が日本全土を覆うように配備され、最近では都市域の降雨をより細かく観測できる小型の「XバンドMPレーダ」が整備されてきている。これらのレーダは、パラボラアンテナを機械的に回転させて降雨観測を行うため、地上付近の降雨分布観測には1~5分、降水の3次元立体観測には5分以上の時間を要する。局地的大雨をもたらす積乱雲は10分程度で急発達し、竜巻もわずか数分で発生し移動するため、それらの兆候をより迅速に察知するためには、より短時間で詳細な3次元構造を観測できるフェーズドアレイ気象レーダ技術の実現が期待されている。
今回、東芝、大阪大学、NICTが共同で、Xバンドの「フェーズドアレイ気象レーダ」の開発に日本で初めて成功。2012年5月に大阪大学・吹田キャンパスの電気系建屋屋上に設置し、調整作業を続けてきたが、今回試験観測を開始した。
フェーズドアレイ気象レーダでは、128本のスロットアレイアンテナによる“デジタルビームフォーミング(DBF)”を採用することで、観測時間をわずか10~30秒に短縮することができた。従来型のレーダでは、3次元観測を行うためには、パラボラアンテナをその仰角を変えながら10数回転させる必要があったが、同レーダでは、仰角方向にDBFを用いた電子走査(最大112仰角)を行うことで、アンテナを1回転させるだけで半径15~60km、高度14kmまでの範囲における隙間のない詳細な3次元降水分布を観測することが可能となった。
今後、局地的大雨や集中豪雨などの現象を対象として性能評価試験を兼ねた観測を行う。同レーダにより得られる詳細な3次元観測データは、短時間に大雨をもたらす積乱雲のメカニズムを明らかにする。このことは、気象予測の高精度化、また局所的・突発的な気象災害の前兆現象の検出や短時間予報(ナウキャスト)情報としても期待される。
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