情報システム活用による経営革新について

2012年7月23日 12:07

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■低コスト経営時代に求められる経営革新のあり方
 以前、低コスト経営時代に勝ち残る「業務改善とIT活用によるコスト削減の具体策」というテーマで、情報システム会社が主催するセミナーが行われた。A&Mコンサルトも協賛という形で基調講演を行った。

 基調講演は「低コスト経営時代に求められる経営革新のあり方」と題して、経営環境の認識とその中で求められる経営革新の進め方、情報システムを活用した改革の進め方を講演した。今回はこの講演の要点を説明する。

■環境の変化への対応
 リーマンショック以降、日本経済が不況になり、円高、株価低迷、総じて企業業績も悪化した。特に基幹産業である自動車の国内生産台数減少、住宅着工の減少が顕著で内需拡大が難しく、東アジア(中国、韓国)、東南アジア、南アジア(インド)の新興国への外需の対応が必要になった。

 今年になり企業の業績に明るい兆しが出始めたが、これは、デフレ環境の中で企業が、中国、インドへの海外シフト、低価格商品の開発、EV、HEV等の革新商品の開発等、環境の変化に柔軟に適応した結果だと考える。環境変化に適応した事例では日本電産、ニトリ、マクドナルド、ユニクロ、コマツを取り上げた。

■「攻めと守りの経営」
 これらの企業の共通点は、以前取り上げた「オフェンス(攻め)とディフェンス(守り)経営」の推進を進めている事である。オフェンス(攻め)経営として顧客の創造を前提に売れる製品の開発、ディフェンス(守り)経営として固定費の低減、変動費の低減を進めている。

 このオフェンス(攻め)とディフェンス(守り)経営を支援するツールとして情報システムがある。オフェンス経営ではITを活用して新規顧客開拓、新製品開発、ディフェンス経営ではITを活用して業務プロセス改善を進める。この業務プロセス改善の中身として、経営プロセス改善ではERP、開発プロセス改善ではPDM、生産プロセス改善ではSCM、販売プロセス改善ではSFA、この全てを包含したPLMがあり、これらの情報システムツールを活用して改革を進める事が現在の経営ではスピード、効率性、効果性を考えても重要である。

 なお、ITを活用した業務プロセス改善の場合、IT導入と平行して業務改善を進める必要がある。ITツールを導入して、業務改善がなされなければ効果がでない。業務改善は現状の仕事の内容について目的を追究し、その仕事が行われている要因を調べ、他と比較する事により問題点を抽出し、その問題点を解消する改善案を検討し、実施する。

■ITを導入する場合の成功ポイント
 以上が講演の要点であるが、このITを導入する場合の成功ポイントを記載する。

1)構想段階
・経営戦略上のIT導入の位置付け明確化

2)企画段階
・IT導入の直接目的、目標明確化
・事業特性、商品特性、生産特性に合ったIT導入範囲、導入方式の決定

3)構築段階
・業務改善とIT適応設計を平行して実施
・優秀なSIベンダーの設定
・パッケージシステムの場合はカスタマイズ、アドオンの最小化

4)導入段階
・システムに適応した組織変更の実施
・徹底したシステム、データ精度検証

5)本番稼動段階
・早期問題抽出と前向きな対応策の検討

著者プロフィール

中山 幹男

中山 幹男(なかやま・みきお) 株式会社A&Mコンサルト 代表取締役

大阪大学工学部機械学科卒業後、大手自動車メーカにおいて商品企画、設計・開発、品質管理、環境対策業務等に従事。その後大手コンサルティングファームの経営コンサルタントとして7年間勤務。
韓国の大手家電メーカを手始めに製造業を中心としたコンサルティングを実施する。1997年に「現場主義を貫き、行動的に活動して成果を出す経営コンサルティング」を目指し、A&Mコンサルトを設立し現在に至る。激変の環境変化の中で、企業の永続的な存続を前提に戦略構築、仕組改革、組織風土改革のトライアングル視点で企業の体質強化を図る。
会社URL  http://www.a-and-m.biz

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