本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第2回 中小企業の人事制度の目的-成果主義をどう考えるか?(1) (1/2)

2012年5月8日 19:28

印刷

 今回からは「人事制度の目的」ということで、中小企業なりの着眼点という部分で、私が現場で経験してきた内容を交えてご説明していこうと思います。

■「人事制度の目的」としてよく聞く事柄
 私が多くの中小企業経営者の方々とお話をしていて、人事制度に求めるものとしてよく聞くのは、「成果を上げた人に報いる」というところです。程度の差はあるものの、何らかの形でこれが取り上げられることが多いです。

 人事制度作りを考える時、まず始めに行き当たるキーワードに「成果主義」と「目標管理」があります。成果を上げた人に報いる制度が「成果主義」であり、自分で決めた目標を主体的に管理することで、やる気と成果につながる制度が「目標管理」であると言われます。「成果主義」を実践するための評価ツールとして、「成果主義」と「目標管理」がセットで導入されていることが多いと思います。

 ただ、実際に「成果主義」と「目標管理」について調べてみると、賛否両論でそれぞれ正反対の見解があって、はたして実際にはどうなのかが今一つわかりづらいのではないでしょうか。今回はこのあたりを中心に、私なりの捉え方でご説明したいと思います。

■「成果主義」と「目標管理」の今
 「成果主義」はこの10数年で多くの企業に取り入れられ、途中行き過ぎた形からの揺り戻しはありましたが、現状使われている人事制度では、何らかの形で成果主義的な要素を持っている場合がほとんどと思います。一般的には定着している考え方ということができるでしょう。

 にもかかわらず、「成果主義」と「目標管理」については、多くの否定的な見解も見受けられます。私が知る中でも、「成果主義」と「目標管理」によって、業績が上がったとか、社内が活気づいたという100%肯定的な話は、残念ながらあまり聞いたことがありません。

 では、そんな制度ならばなぜやめないのかとなりますが、実際に「成果主義」と「目標管理」を全面的にやめたという話もあまり聞きません。これには「思ったほどではなくても一定の効果はあった」ということと、「やめたとしてもその代わりになる仕組みが見出せない」ということのいずれかの理由が多いと思います。中には「後ろ向きな姿勢と取られたくない」「今さらやめるといえない」なんていう、あまり合理的でない理由もあるようです。

 少なくとも「頑張った人には報いる」という考え方は肯定しつつも実際にはなかなかうまくいかず、かといって他に良い方法も見当たらず、現場の慣れを期待しつつ、制度を修正しながら運用しているというのが実態ではないでしょうか。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

記事の先頭に戻る

関連記事