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■なぜ「成果主義」がうまくいかないのか
成功事例があまり多くなさそうな「成果主義」ですが、ある程度うまくいっている例も一部で耳にします。
例えば、比較的大企業で平均以上の賃金水準を維持している会社です。要は一定の安定の上でのプラスアルファ、インセンティブとして「成果主義」を機能させている場合です。
また成果がわかりやすい業態や職種の場合も、比較的うまくいっている例があります。成果として認められる要素が定量化しやすく、結果の大半が自分次第で、その評価が人によって左右されないような場合です。
もちろん、うまくいっているように見えても、社員の定着や帰属意識、社員同士の協働といった目に見えづらい部分では、問題をはらんでいる可能性はあります。
私が「成果主義」のうまくいかない原因として考えるのは、人事制度においてバランスを取らなければならない要素が、その会社の状況にマッチしていないということです。
バランスを取らなければならない要素とは、仕事内容や評価における“定量と定性”“主体的行動の可否”“個人とチーム”のバランスと、給与における“水準と配分”“ベースとインセンティブ”のバランスです。
例えば、数字では成果を表しづらい仕事内容なのに、数字だけで“定量的”に評価されたり、自分ではどうしようもないことに左右される、“主体的”に決められない環境にもかかわらず、結果だけ問われたりするような場合です。当然納得しづらいし、成果にもやる気にもつながりづらいでしょう。
「結果が見えやすい目先のことしかやらなくなった」「人材育成をおろそかにするようになった」などという現象は、“個人とチーム”のバランスを欠いた結果だと言えるでしょう。
また「成果主義」は、成果という基準のもとに給与原資を配分する仕組みですから、基本的には決められたパイの奪い合いになります。こういう中で、一定の給与水準という“ベース”が維持できないのに、“インセンティブ”という配分ばかり強調しても、社内が活気づくことはないでしょうし、成果だ評価だといいながら、それを反映する部分がわずかしかなければ、結果は同様でしょう。
歩合給のような制度も、パイを増やせば自分に返ってくるという面はありますが、基本的には売上と賃金を比例させる仕組みで、“ベース”は低く抑えられがちなので、どちらかといえば経営上の都合は良いが、社員にとっては負担が大きい制度だといえるでしょう。(もちろん、こういう制度がマッチする業態もあると思います)
「成果主義」を取り入れるのであれば、これらのバランスを人事制度上でどう考えるかを、しっかり捉えることが重要になります。
特に中小企業の場合は、仕事を進める体制、扱う商品やサービスの特徴、社員の気質や組織風土、業績動向や財務状況などを踏まえ、自社の状況にふさわしいバランスがどこにあるのかを見極める必要があります。そしてそのためには、単に「成果を上げた人に報いる」というような事ではない、もう少し大局的な、本当の意味での人事制度の目的を意識する必要があります。
次回も引き続き、中小企業の成果主義について、お伝えしようと思います。
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