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被災地への心の支援とは
東日本大震災から一年が経ち、三菱東京UFJ銀行経済調査室の見込みでは官民合せて24.9兆円にも上る被災地の復旧・復興需要が本格化している。同調査室の経済レビューによると、先行指標的性格を持つ公共工事請負額や新設住宅着工面積、新規求人倍数などが前年度後半から顕著に伸びており、特に被害の集中した岩手・宮城・福島の三県では、公共工事請負額が3県合わせて2月に前年比約4倍、3月で同5倍、住宅着工面積が1月・2月の平均で約4割増、新規求人数も同7割増に迫っているという。
復旧・復興需要が本格化し出したとはいえ、支援の必要性が無くなった訳ではない。3月22日までに日本赤十字社に寄せられた東日本大震災義援金3120億9004万6275円、中央共同募金に寄せられた同義援金は392億2255万5870円となっており、さらに、これら義援金以外にも企業や団体・個人から被災地・被災者に直接寄せられた支援もある。しかし、それでも日本赤十字社が義援金の受付期間を半年延長し、現在も被災地で活動するボランティアやNPOの果たす役割が大きいことから、中央共同募金がそれらの活動をサポートするための募金を実施していることからも、未だに支援が必要とされていることが窺えるであろう。
また、被災直後の混乱から抜け出し、復興に向けて動き出した頃から必要性を増して本格化しだしたのが心の支援である。文化庁では、被災地の小中学校や避難所などに芸術家などを派遣し、子どもたちに文化芸術活動を提供する「次代を担う子どもの文化芸術体験事業(派遣事業)」を平成23年8月から実施。音楽や演劇、落語、ダンスなど地域のニーズや状況に応じて459件の事業が実施され、平成24年度も引き続き実施されるという。また民間でも、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーションが、ロームの協賛を得て「被災地支援コンサートへの助成」を実施し、全国各地のプロのオーケストラ・吹奏楽団、全27団体が福祉施設や体育館などで計85回もの公演を行い、延べ約2万5千人もの方々に心温まる音楽を楽しんでいただくなど、被災者に明るい希望を持ってもらうための活動が広がっている。心に関して、治療的とも言えるケアが最優先であった時期から、励ましたり勇気付けたりする活動へと重点が移動していると言えるのかもしれない。
東日本大震災における復旧・復興需要が本格化しているとはいえ、未だに必要とされる支援。特に心の支援は、長期にわたり復興を担う人々を支えるものとして、今後更なる広がりが求められ、実施もされるであろう。では、東日本大震災の翌日に発生した長野県北部地震や、昨年8月末から9月初めの間に発生した紀伊半島の大水害、同年1月に発生した霧島連山の新燃岳噴火などに対する支援はどうか。災害発生直後こそ被害の状況を訴え支援を求める声が聞かれたものの、今となっては無かったことのようである。確かに経済的損失や社会に与えた影響の差異は大きいかもしれないが、支援、特に被災者に対する心の支援の必要度に違いはないはずである。先の経済レビューによると、被災地で24.9兆円とされる復旧・復興需要は他地域をも刺激し、日本全国では43.1兆円にも上ると見込まれている。東日本大震災の被災地以外の被災者にも心の支援が広がれば、この需要を押し上げたり、日本全土が活力を取り戻すことにも繋がるのではないだろか。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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