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本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第1回 中小企業に人事制度は必要か?(1/2)
■はじめに
私がお手伝いする機会が多いテーマの一つに、「中小企業の人事制度作り」があります。
「人事制度」は、一言で言えば、“社員の処遇などを制度化、体系化すること”です。どんな会社でも社員の処遇に関する決まりは、就業規則をはじめとして何か必ずあるはずですが、これらを体系的につないで、仕事の効率化、生産性の向上、会社と社員の良好な関係作りなどを図るものです。
中小企業で人事制度を作るにあたっては、社内で取り組むことがほとんどでしょうが、参考にした事例が自社に合わなかったり、運用してみたら予想外の事象が起きたり、社員の反発があったりと、なかなか思い通りに進まないことも多いのではないでしょうか。
このコラムは、中小企業での人事制度作りにあたって、書籍などにはなかなか載っていない現場での事例、実務上のエピソードなど、中小企業ならではの事情を交えて、皆さんの会社での取り組みの参考にして頂こうというものです。
「そうか、こんなことも起こるのか」「なるほど、こんなやり方もあるのか」といった、小さな気づきが提供できればと思っています。
■人事制度って必要ですか?
私が中小企業の経営者の皆さんにお話をうかがう中で、「人事制度」に問題意識や興味をお持ちの方と、そうでない方は半々でいらっしゃいます。
人事制度は必要ないという方がよくおっしゃるのは、「俺がちゃんと見て全部わかっている(まだ見通せる規模である)」「臨機応変な経営判断ができなくなる(決まりに縛られたくない)」など、経営者がその時々の状況で、自己裁量で判断できる余地が狭まると考えているようです。「仕組み通りに動けるほど安定していない(不満の種になる?)」と心配する方もいます。
また、制度が必要という方でも、「マネージャーが力量不足なので、細かく仕組みで決めてやらないと動けない」など、ルールを決めることが主眼の方もいらっしゃいます。
これらは経営者の考え方としてはそれぞれアリだと思いますが、問題は社員の側がこれをどう感じているかです。「ちゃんと見てくれているから安心している」「まだ力が足りないので、決まっていた方がやりやすい」と思っていれば良いですが、「その時々で言うことが違う(基準が違う)」「自分たちの裁量を認めてくれない」「きちんと見てくれていない」と思っているとしたらどうでしょうか。
程度の差はあれ、経営者と社員の間には、何らかの認識ギャップがあるのが普通だろうと思います。
ここから言えるのは、やはりどんな規模の企業であっても、この認識ギャップを埋めるために「人事制度」は必要であり、さらにその中身は各社各様で違うということです。
中小企業で「人事制度」というと、何か大げさなものと捉えて「うちには必要ない」と言われることがありますが、小さい会社だからこそのやり方があります。
私の経験ですが、社長がご自分の裁量で全社員の給与を決めているような会社で、社長に「どんなところをどんな優先順位で見て給料を決めているのか」を細かくインタビューし、それを整理するだけで評価制度にまとめたことがあります。要は経営者が感覚的に思っていたことを言語化、資料化しただけなのですが、その会社はそれで十分に機能し、社長が無用な苦情を受けることもなくなりました。
「人事制度」をあまり難しく考えすぎないことも必要ではないでしょうか。
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