関連記事
本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第1回 中小企業に人事制度は必要か?(2/2)
■中小企業こそ自社主導でオリジナルを作ろう
先に述べたとおり、中小企業で人事制度を作る場合、できるだけ自社内で取り組もうとすることがほとんどだと思います。しかしいろいろ調べるものの情報が多すぎて、とりあえず目についた他社事例をそのまま使ってしまうなんてことがよくあります。実際に運用してみても、それが自社に合っているのかどうか、イマイチ判断できなかったりします。
また、社外に依頼するとしても、私たちのような人事制度を扱うコンサルタントはたくさんいます。経験も考え方もまちまちで、誰がどうなのかはわかりづらいものです。
私の立場でいうのも何ですが、実際のところ、難解な使いづらい制度を作ったり、自分の考えを押し付けたりするコンサルタントがたくさんいるのも事実で、「せっかくお金をかけて作ったのにうまく使えない」なんてことが多々あります。
私が中小企業の人事制度作りでお勧めするのは、「あくまで自分たち主導でオリジナルの制度作りをすること」です。
私は人事制度作りのご依頼を受けた時、できるだけ多くの社員を対象に詳細なヒアリングをしますが、これは社内の事情をできるだけ細かく知るためです。可能な限り、個々の性格や社内の人間関係までも観察します。そうでないと、その会社に合った制度は作れないからです。
その点、社員であれば、そんな事情をあえて聞き直す必要もありません。中小企業であれば、社員同士の距離が近いのでなおさらでしょう。社内事情の本当のところは社員しかわかりません。そのあたりを理解しているということは、人事制度を作る上ではとても重要な事です。
もう一つ、実際に制度を運用する上での納得性の問題があります。大企業の場合は組織全体が見通しづらいですから、自分の知らないところで決まったことでも、それなりに受け入れて取り組むことに慣れています。多少合わない部分がある制度でも、現場がそれなりに適応して運用できてしまうところがあります。
これが中小企業となると、会社全体に目が届くこともあり、「自分が関与しないで誰かが決めたこと」には納得しづらい傾向があります。ひとたび「この制度はダメだ」などと思ったならば、それこそ非難ごうごうで運用どころではなくなってしまいます。
これを防ぐには、“関係者を制度作りのプロセスに参加させること”です。人事制度のように一律の正解がない事柄は、答えを出すまでのプロセスを理解しているか否かで納得感が大きく違います。
このあたりが、中小企業ほど「自分たち主導で作るオリジナルの制度」が望ましいという理由です。
ただ一方で、中小企業の場合、自社で積み重ねた経験やノウハウは、残念ながら大企業に比べて少ないです。「人事制度」は各社各様で正解がないといいながらも、こうすれば60~70%はうまくいくだろうという原理原則はあります。(先人の知恵、経験ともいえます)このあたりを補足するのが、多くの「人事制度」に関する書籍や資料であり、社外の専門家たちが持っているノウハウということになります。
「自社主導でオリジナルの制度を作ること」を基本に、必要に応じて様々な文献や、自社のことをよく理解した社外リソースを活用することが、自社に合った制度を作る上では望ましく、結果的に早道になるでしょう。
「人事制度」は会社が自己管理をするための仕組みです。オリンピック選手と同じトレーニングメニューを組んでも、速く走れるわけではありません。そればかりか故障して今までより走れなくなってしまうこともあります。だからこそ、自分たちのレベルや体力に合わせ、自分たちで決めるべきなのです。うまくノウハウを取り入れながら、「自分たちのことは自分たちでする」という姿勢が最も重要であろうと思います。
次回は、人事制度を作る目的について、お伝えしようと思います。
スポンサードリンク