ブランド見聞録:ブランドはマーケットを勝ち抜く経営ツールです:第9回 中小企業のブランド戦略(1)

2012年3月8日 17:43

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 「1年後を目途に息子に経営を任せる予定なので、それを機にわが社もブランド化を図りたいのですが…」と、最近は事業承継絡みの中小企業のブランド戦略コンサルティング案件を受けるケースが増えてきました。

■中小企業こそ、ブランド戦略を明確にすべきである
 弊社が中小企業のブランド戦略コンサルティングに積極的に取り組み始めたのは2008年のリーマンショック以降のことです。それまでは国内外の大手・中堅企業の案件がほとんどでしたが、ちょうどその年に経済産業省・関東経済産業局の中小企業を対象とした知財戦略コンサルティング事業に携わったことがキッカケとなり、これまでに多種多様な業種の中小企業の知財戦略やブランド戦略のコンサルティングに携わってきました。

 それらの経験から再認識したのは、中小企業こそ明確なブランド戦略を持つべきだということです。ブランド戦略は“企業の生き様”でもあります。その戦略の在り方1つで生き方が大きく変わり、中には自ら破滅への道を選んでいる戦略さえあるのです。

 今回のコラムから、最近の中小企業におけるコンサルティング現場での経験談を交えながら、中小企業のブランド戦略のポイント”に関して、改めて述べていこうと思っています。

■事業承継=ブランドの再構築の難しさ
 さて、話を元に戻します。前述した事業承継のように、既存のブランドを改めて再構築することは、新たにブランドを立ち上げるより、数倍難しく、数十倍の努力と忍耐が必要です。何故なら、良きにつけ、悪しきにつけ、すでにブランド像が顧客の心の中に出来上がっているからです。増してや商圏が限られている業種の中小企業ともなると尚更です。

 加えて中小企業の事業承継の場合は親子間で行われるケースが多く、現経営者である親は口では「若い者に任せたい」と言いながらも昔の成功体験から現状を守ろうとし、後継者である子は子で自分なりの独自の色を早く打ち出そうと「とにかく新しくしたい」と意見が衝突するケースは少なくありません。まれに親の言いなりで何も変えようとしない後継者もいて、それはそれで困りものですが(汗)。

■何よりも大切なのは客観的に現状を捉えること
 まずハッキリしているのは、コンサルティングを依頼したということは、現状ではダメだということです。そして、将来的にどのような企業=ブランド像を目指すのか。ブランド構築を図る目的は何なのか。競合他社と比べて自社の真の強み何であるのか。今後マーケットの状況はどうなっていくのか…などを、客観的に捉えなければなりません。実はこの“客観的”というのがクセもので、多くの場合は“主観的”つまり“手前味噌”になりがちです。

 先に述べた中小企業の事業承継の際に、親子で意見の対立が生じるのも、双方が“主観的”な視点で発言しているのが主な原因です。実際に何時間もミーティングに費やし、ようやく合意に至った戦略に対して、いきなり深夜に現経営者から電話が入り、「私の目の黒いうちは、いまは何も変えたくない」…なんてケースもあります。

 現状を“客観的”に捉えることが出来れば、やるべきことは自ずと見えてくるはずなのですが、それが難しいのです。仮にどうしても“客観的”になれなくても、ご心配はいりません。そのために私たちのようなコンサルタントがいるのですから。

 次回のコラムでは、ブランドを構築していく上で核となる戦略の重要性を、経験談も交えながら述べる予定です。

著者プロフィール

町田 芳之

町田 芳之(まちだ・よしゆき) 有限会社クリエイティブ・コネクション代表取締役

ブランド戦略コンサルタント/クリエイティブディレクター
公益財団法人 日本生産性本部認定 経営コンサルタント
大学を卒業し、松下電器の広告制作会社にコピーライターとして入社。その後、大手外資系広告会社でクリエイティブディレクターとして勤務し、独立。国内外の大手企業だけでも80社120ブランド以上のブランディングに携わる。また著名な広告賞を数多く受賞。現在は中小企業を中心に“ブランド戦略の策定から、各種アクションプランの企画・実施まで”ワンストップで提供している。
■経済産業省・関東経済産業局 平成22年度「地域中小企業知財経営基盤定着支援モデル調査委員会」委員 /「中小企業応援センター事業」コンサルタント 
■農林水産省・まちむら交流きこう「食と農林水産業の地域ブランド協議会」地域アドバイザーなども務める。
有限会社クリエイティブ・コネクション http://www.creative-connection.jp

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