省エネ大賞、広がる「見える化」

2012年2月13日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 平成23年度「省エネ大賞」(財団法人省エネルギーセンター主催・経済産業省後援)の受賞者が発表され、省エネ事例部門22件及び製品・ビジネスモデル部門20件が、経済大臣賞や資源エネルギー庁長官賞などの各賞を受賞した。

 製品・ビジネスモデル部門には、シャープの液晶テレビ「AQUOS L5シリーズ」やパナソニック・アプライアンス社の電気冷蔵庫「エコナビ搭載冷蔵庫」、三菱電機の家庭用エアコン「霧ヶ峰」など、毎年「省エネ大賞受賞」を大きく打ち出したテレビコマーシャルで馴染みのあるものが多く並んでいる。一方で、省エネ事例部門は平成21年度に創設された部門であり、あまり認知度は高くない。しかし、実際に導入されている事例ばかりであるだけに、一見の価値はあるのではないだろうか。

 今年度の省エネ事例部門受賞者の要旨に多くみられた言葉が、使用状況や改善効果などの「見える化」である。そのシンプルな事例が省エネルギーセンター会長賞の日本食研ホールディングス「見える化から始まった省エネ活動の実績」であろう。FEMS(エネルギー使用の合理化および工場内設備・機器のトータルライフサイクル管理の最適化を図るためのシステム)導入により改善効果を確認できるようにし、2010年度は2009年度に対して原油換算で約120kl削減を実現している。また、昨夏の電力不足時に風当たりの強かったパチンコ業界であるが、そのパチンコ店24店舗を含む総合サービス企業である東和産業も「見える化」を推進。運用改善(省エネ意識の啓蒙)管理体制の整備、デマンド監視装置の導入などから、照明機器の効率向上、間引き・消灯などの可能な限りの対策を実施し、年間約13%の節電を実現。資源エネルギー庁長官賞を受賞している。

 さらに、築34年経過したテナントオフィスビルの全面リニューアルによる省エネ改善事例として、ロームのローム京都駅前ビルが同賞を受賞している。同社は、半導体工場で培った省エネ技術ノウハウを、事務所ビルに展開することを柱として「見える化」を実践。それだけでなく、省エネ3原則(負荷抑制、自然エネルギーの活用、高効率機器)をコンセプトとし、ビルの躯体はそのままに、耐震補強や最新設備の導入に加え、外装・内装の一新などを実施している。太陽光追尾型ブラインドや屋上緑化、太陽光発電や雨水利用、全館自社製LED照明の導入などとともに、BEMS(負荷変動やシステム特性の変化に対応してビル内の環境と省エネルギーを常に最適状態に保つ為のツール)を用いることで、リニューアル前と比較して年間で約44%の大幅なエネルギー原単位低減を実現。一般事務所ビルと比較しても37%の省エネとなっているという。

 高まった節電意識の中で、各企業はどのような省エネ策を実践してきたのか、そのモデルケースがこの省エネ事例部門に見られる。テレビコマーシャルなどで派手に宣伝される製品ばかりではなく、こういった諸策にも目を向けてみると、自らにも実践できる省エネ対策がきっと見えるはずである。

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