関連記事
現場で働く社員の気持ちから生まれる「からくり改善」
社団法人日本プラントメンテナンス協会が主催する展示会に、「からくり改善くふう展」がある。これは、国内企業各社の製造現場で「お金をかけない、創造性に優れた、たのしい作業改善」を目的に開発した技術を披露する場で、各社の「からくり改善」が一堂に会するからくり展の甲子園とも言うべきものとして1993年度より定期的に開催されている。
同会の参加企業の中でもヤマハ発動機は、社内行事として「からくり改善くふう展」を開催している。2011年度チャンピオンになったのは、第2SyS部生産2課の鈴木久夫氏が考案した円筒状の装置「全IN集合」。これは、バイクのエンジンに用いるバルブシートと呼ばれる部品の種類や吸・排気のいずれか、またそれぞれの表裏を判別し、圧入する次の工程のために一列に並べ直す装置。同部品は、車種ごとにサイズや形状が異なり、また同一の車種でも吸・排気でそれぞれ部品が異なるほか、表と裏でも微妙に形が違うが、同装置ではその判別を摩擦の力や段差など極めて物理的な手法で完結するあたりが、まさに"からくり"といった印象を与える。
「もう20年以上も前の話になりますが、娘がまだ小学生だった頃に夏休みの工作で"からくり貯金箱"を作ったことがあります。硬貨の大きさで種類を判別する簡単な仕組みだったのですが、発想としてはそれとまったく同じなんですよ」と鈴木氏。しかし同装置を使用することにより、従来比で4倍もの省力化につながるからその実力は折り紙つきだ。多品種少量生産へのシフトが進む中、この工程でも機種変更のために要する段取りの切り替えが週に3から4回発生しており、すでに実稼働している「全IN集合」は効率化のための頼もしい推進力になっている。また、製作費は社内に残っていた廃材などを使ったため、ほぼゼロだという。
同社では、こうして出し合った知恵の数々は社内オンライン「ヤマハ モノ創り情報YPRS・知恵袋」というコンテンツを通して保存・共有・活用され、日々の改善に役立てられている。またこのシステムは「海外の生産拠点にも順次展開していく予定」だという。鈴木氏は「嬉しかったのは、社内の展示会会場で他部門の人たちから"これはうちでも使えるかもしれない"という会話が聞こえたことでしょうか。小さな着想・発想が、部門を超えて会社の役に立てることが素直に嬉しかった」と話す。
いま生産の現場では、人員減・スペース減などさまざまな環境変化が進んでいる。だからこそ小さな工夫・改善の積み重ねは欠かせない。知恵を出し合いながらそれを共有し、さらなる効率化や信頼性へとつなげていく。これこそ日本のモノ創りの現場を支えるエネルギーの源といえるだろう。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
スポンサードリンク