組織の機能分担について~組織力を増加する組織機能とは~

2011年8月16日 16:59

印刷

■売上を伸ばすことができる組織とは・・・
 先日、クライアント先の仕事で売上対策の議論をした。不況の影響で製造業は軒並み前年度比較で売上ダウンが発生し、工場の操業停止に追い込まれている企業も珍しくない。

 このクライアント先も売上が前年比半減し、社長は売上確保に躍起になっている。自己資本比率が高く、赤字が出ても企業の存続にすぐ影響するような問題はないが、やはり外部環境の影響にして成り行きで売上を落とす事が問題と考えているようである。

 この為、営業部門長、技術部門長、製造部門長、管理部門長の経営幹部を集めてこの厳しい環境下で売上確保をどうしたらできるか議論をした。

 ところが主体となるのは営業部門で他の部門長は他人事である。売上を確保するのは営業部門の役割で我々は設計、製造、管理部門でやるべき事は別にあり支援はできるがという感じである。

 まさに私「売る人」私「設計する人」私「造る人」である。

 このままでは議論が進まないので「全員営業」というキーワードを提案した。販売するのは営業部門だけではなく、全ての部門が営業マンとして活動し、売上を稼ごうというコンセプトである。

■組織の壁を乗り越える
 確かに会社が大きくなり、組織化されると職務分掌を作成し、各部門の役割を明確化し組織的に企業活動が行なわれるようにする事が大切である。各従業員が個人商店的に動いていると非常に業務の効率が悪くなる。

 但しこれが行き過ぎると組織間の壁(セクショナリズム)が発生し、部門最適で行動するようになる。経営コンサルタントの一倉定が「責任範囲の明確化」自体が無責任社員を作り出すといっているように、平常時は効率化の為に組織的に仕事をこなす事は大切であるが、非常時は組織の壁を乗り越えて活動することが重要である。

■全員営業
 この会議ではこの観点で非常時の売上確保というテーマで全社員が営業になって活動しようというコンセプトで提案した。以前、新聞に岩崎電気という会社が「営業に技術員を動員」という記事が載っていた。技術者40人の内20人を工場に近い客先に営業活動をさせるという施策である。

 この施策は製品の技術内容に詳しい技術員が直接製品を説明する事で製品導入がしやすくなる。また、顧客から不満や要望を直接聞けるので製品開発に役立てる事ができるというメリットもある。

 まさに全員営業の観点で職務機能を乗り越えて活動する事により、売上確保のメリットも出せ、個人の能力も上がると考える。

 私も昔、自動車メーカの開発部隊にいた時に半年営業マンとして活動した事がある。最初はなぜ開発担当者が営業活動をする必要があるのか、時間が無駄だと感じていたが、実際仕事をしてみると直接顧客と接することができ、車に対する顧客のニーズ、使い方が現場体験でき非常に有用だったと記憶している。

 この厳しい経済環境下で、通常時のルーチンを回す組織活動だけではなく、大きく組織機能、役割を乗り越えた人の配置、行動により経営課題を解決する施策を実施する事も必要ではないかと考える。

著者プロフィール

中山 幹男

中山 幹男(なかやま・みきお) 株式会社A&Mコンサルト 代表取締役

大阪大学工学部機械学科卒業後、大手自動車メーカにおいて商品企画、設計・開発、品質管理、環境対策業務等に従事。その後大手コンサルティングファームの経営コンサルタントとして7年間勤務。
韓国の大手家電メーカを手始めに製造業を中心としたコンサルティングを実施する。1997年に「現場主義を貫き、行動的に活動して成果を出す経営コンサルティング」を目指し、A&Mコンサルトを設立し現在に至る。激変の環境変化の中で、企業の永続的な存続を前提に戦略構築、仕組改革、組織風土改革のトライアングル視点で企業の体質強化を図る。
会社URL  http://www.a-and-m.biz

記事の先頭に戻る

関連記事