欧州医薬品庁、糖尿病治療剤と膀胱がんの関連性を継続検討 武田薬品が発表

2011年6月26日 18:36

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 欧州医薬品庁(EMA)は欧州時間6月23日、6月20日から24日まで開催中の欧州医薬品評価委員会(CHMP)の月次会議の結果、2型糖尿病治療剤ピオグリタゾン塩酸塩(以下「ピオグリタゾン」)を含有する製剤による膀胱(ぼうこう)がんの発症リスク増加の有無について、継続検討していく旨を公表した。24日、武田薬品工業が発表した。

 ピオグリタゾンと膀胱がんリスクの関連性については、フランス政府の医薬品規制当局が今月9日に問題を指摘。武田薬品工業の糖尿病治療薬「アクトス」などにピオグリタゾンが含まれていることから、同社はその使用方法について注意を呼びかけるとともに、関連性について独自に調査を進めている。

 また同社によると、CHMPは、その諮問機関である「Scientific Advisory Group(SAG)」に、7月上旬の会議において、ピオグリタゾンと膀胱がんの発症リスクに関するデータおよび臨床現場における患者のリスク軽減策について検討することを要請。CHMPは、SAGの検討結果を踏まえて、7月のCHMP月次会議で最終的な意見を採択することもあわせて公表している。

 欧州では、2011年3月から、CHMPが、欧州委員会(EC)規則No. 726/2004 第20条に基づき、関連する非臨床および臨床データを用いて、ピオグリタゾン投与による膀胱がんの発症リスク増加の有無について、関連する全ての有効性・安全性データ評価を行ってきた。

 今回の発表を受け、武田薬品工業は、「当社は患者さんの安全性を最優先に考え、これまでと同様、ピオグリタゾンを含む全ての当社製品に関する安全性と忍容性の評価を継続するとともに、EMAならびに各国の規制当局に全てのデータを提供し、適切な対応をとっていく」とコメントしている。

 一方、同社によると、同社が支援している米国でのKaiser Permanente医療保険グループ(KPNC)とペンシルベニア大学による、2002年から10年間の疫学調査の中間解析結果では、主要評価項目である全体解析で、ピオグリタゾン投与と膀胱がんの発症率に統計学的に有意な関連性は認められなかったが、副次評価項目では、24ヶ月以上ピオグリタゾンを投与した場合、膀胱がんの発症率が若干増加することが示されたという。

 その中間解析結果は、2011年4月号のDiabetes Careに掲載され、各国の規制当局に既に報告しているという。調査は、2012年末まで継続され、その後、最終結果が報告される予定。また、欧州では、大規模臨床試験PROactiveに参加していた患者を対象として、長期投与時の観察試験(EC455 PROactive extension trial)も実施しており、2015年に最終結果が判明する予定。

 なお、日本においては、ピオグリタゾンを含有する製品(製品名:アクトス錠、ソニアス配合錠、メタクト配合錠)の添付文書中の膀胱がんに関する「使用上の注意」の一部改訂を予定しているという。米国においても、同製剤の添付文書の一部改訂についてアメリカ食品医薬品局(FDA)と協議中だという。

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