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■数の採用?質の採用?-採用基準の話
もう10年近く前になりますが、ある大学の就職懇親会でお会いした他社の採用担当の方が、「うちの会社は質に妥協しない厳選採用だ」と私に力説していたことがありました。当時はまだ採用数ばかりを重視しているような会社もありましたから、たぶんそういう会社との違いを言いたかったのだと思いますが、私がその時思ったのは「なんだかんだ言っても、質のとらえ方は会社によってまちまち」ということでした。
どんな会社でも一定の採用基準はあり、そこに達しない人はほぼ間違いなく採用しないはずです。よく「数の採用」「質の採用」といいますが、特に最近では採用する「数」を優先することは、ほぼ間違いなく無いでしょう。また、その「質」がどんな会社でも共通かと言えば、まったくそうではありません。あくまで自社にとっての「質」であり、それが学歴の場合も、学んだことや職務経験の専門性の場合も、性格の場合も、その他人生経験の場合も、千差万別だろうと思います。結局は自分たちなりの基準で、「質」を見極めて選んでいるという事です。
ここでお勧めしたいのは、自社なりの「質」(採用基準ともいえるでしょう)をどんな形でもよいので、できるだけ多くの社員で共有しておくことです。
中小企業の場合、経営者の持っている価値観や感覚だったり、一部の人による"あうんの呼吸"だったり、ある程度の基準は共有されているが、明示まではされていないことが多いはずです。できればこれを言葉にして、明らかにしておくとよいと思います。社長が心の中で思っているのと、言葉にして明示するのとでは、周りの意識は全く変わります。
質を共有する、明示するなどというと、何か大変な作業に感じてしまいますが、それほど大げさなことではなく、自分たちが注目している人物像のポイントを、いくつか箇条書きにする程度でかまいません。中身は「明るい人」「元気な人」「協調性がある人」など、初めは抽象的でも良いと思います。抽象的であっても言葉で示すと、そのニュアンスに見合った捉え方が徐々にできてきます。
周知は文書でも、簡単な打ち合わせで確認しあうだけでも良いでしょう。
ある会社で「チームワーク」と言い続けたところ、それが社員暗黙の基準となり、基準に見合った社員の採用につながるだけでなく、会社説明を通じて同じ志向の応募者が増え、社員も常にチームワークを意識するようになり、いつの間にかチーム成果を志向するような仕事の仕方に変わっていきました。
こんな副次的効果につながることもありますので、是非やってみて下さい。
次回は、会社説明会など自社理解を進めてもらうためのポイントをお伝えしようと思います。
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