アジア、11年は7.8%成長:中印が引き続き成長を牽引=アジア開発銀

2011年4月6日 13:42

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アジアのGDPとインフレ率の推移を示すグラフ(出典:ASIAN DEVELOPMENT Outlook 2011)

アジアのGDPとインフレ率の推移を示すグラフ(出典:ASIAN DEVELOPMENT Outlook 2011)[写真拡大]

 アジア開発銀行(ADB)は6日、2011年のアジア地域の経済成長は7.8%、12年は7.7%になるとの見通しを示した。中国とインドが引き続きアジアの成長を牽引すると予想している。

■中国とインドが成長を牽引
 ADBのチーフエコノミスト、イ・チャンヨン氏は「世界的な不況の中で弾力性を示したアジアは、現在その回復を強固なものとしつつあり、地域内の2大巨頭である中国とインドの急速な拡大が続き、アジアと世界経済の成長を押し上げるだろう」と述べている。

 中国の成長率は10年の10.3%からは低下するものの11年が9.6%で、12年が9.2%という高い成長率となる見込み。インドも11年にはさらに8.2%、12年には8.8%と高い成長率になることを予想している。

■成長のリスク要因
 一方で、中東・北アフリカの政情不安による食料価格と原油価格の高騰が日本での東日本大震災の影響とあいまって、持続的で包括的な成長には潜在的な脅威となる可能性があると指摘している。

 インフレについては、単純に金融政策の引き締めに依存するよりも、為替レートの弾力化や協調的な資本移動管理など、複数の政策を織り交ぜて注意深く取り扱う必要があるとしている。2010年のインフレ率4.4%だったが、2011年は5.3%に上昇する見込み。2012年には4.6%にまで落ち着くと予想している。

 イ・チーフエコノミストは、「世界の貧困層の3分の1がアジアに存在しており、物価上昇の影響に最も脆弱なのは彼らだ」「政策当局者はそのため、インフレが加速する前に先制措置を取ることを考えなければならない」と述べている。

■南南関係の拡大による長期的な成長
 また、より長期的にアジアが成長を持続し包括的なものとするためには、アジア内や中南米、アフリカ、中東との間で新興国同士の「南南関係」を拡大することに大きな可能性があると指摘。しかし、これを実施するためには、各国が貿易や投資の障壁を取り払う必要があるとしている。

■日本の見通し、震災の影響
 日本については、東日本大震災のGDPへの影響は、現在も事態が推移しているため、定量化するのが難しいとしている。そのうえで、日本の11年の成長率は1.5%、12年は1.8%になると予想している。この予想は、震災による大規模な余波や電力需給状況の悪化、福島原発から放射性物質が大規模に流出することはないという想定に基づくものとしている。

 一方、震災の影響が持続的で甚大なものになる可能性がある分野の一つは、世界のエネルギー市場だと指摘。福島原発の問題が原子力の安全性に対する長期的な懸念を強めさせている間、世界のエネルギー市場の構造転換を加速させる可能性があるとしている。

 ただ、総合的には、エネルギー分野を除けば震災による日本と世界への影響は、一時的で限定的なものになると考えられるとしている。

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