日銀「東北関東大震災」で前代未聞のオペ!果たして市場不安は抑え込めるか?

2011年3月17日 11:02

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

「東北関東大震災」に際し、15日までに40兆円に上る公開市場操作(買いオペ)を行なうと発表した日銀だが、白川方明総裁は14日記者会見で、その内容と背景説明を次のように行なった。

「東北関東大震災」に際し、15日までに40兆円に上る公開市場操作(買いオペ)を行なうと発表した日銀だが、白川方明総裁は14日記者会見で、その内容と背景説明を次のように行なった。[写真拡大]

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  「東北関東大震災」に際し、15日までに40兆円に上る公開市場操作(買いオペ)を行なうと発表した日銀だが、白川方明総裁は14日記者会見で、その内容と背景説明を次のように行なった。

  地震発生後、日本銀行は、金融市場および金融機関の業務遂行への影響を把握するとともに、金融機能の維持および資金決済の円滑を確保するために、万全の措置を講じてきています。また、適切な金融市場調節の実施を通じて、弾力的な資金供給を行ってきています。

  本日も、即日オペと先日付のオペを合わせて、約22兆円という大量の資金供給を行っています。なお、日本銀行は、要員の確保や一部自家発電の活用等により、被災地の支店、計画停電地域にある本支店を含め、業務を通常通り遂行しているほか、わが国決済システムは、これまでのところ、全体として概ね安定的に運営されています。その上で、日本銀行としては、この地震がわが国の経済・金融情勢に与える影響を点検し、金融政策運営方針を速やかに公表していくことが、国民心理の安定や金融資本市場の安定を確保する上で重要であると判断しました。このため、本日と明日の2日間で行う予定としていた金融政策決定会合の日程を変更し、本日中に終了するかたちで会合を行いました。

  会合での議論の結果、日本銀行は、金融緩和を一段と強化するために、リスク性資産を中心に、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、40兆円程度とすることとしました。また、次回会合までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート・オーバーナイト物を、0~0.1%程度で推移するよう促す。」というこれまでの方針を維持することを全員一致で決定しました。こうした調節方針のもとで、金融市場における需要を十分に満たす潤沢な資金供給を行い、金融市場の安定確保に万全を期していくことも確認しました。

  こうした決定の背景となる経済・物価情勢についてご説明します。現時点では、マクロの経済データについては地震発生前のデータしかまだ利用できませんが、そのことをお断りした上で、わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつあります。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、下落幅が縮小を続けており、特に、高校授業料の実質無償化の影響を除いてみると、最近では、前年比が小幅のプラスとなっています。先行きの中心的な見通しについては、不確実性が高いわけですが、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくというこれまでの判断を維持しました。

  今回の地震は観測史上最大規模のものであり、その被害が地理的にも広範囲に及んでいます。東北地方では港湾等の社会インフラを始め多くの被害が生じているほか、関東地方でも大規模な工場にも被災が及んでいます。このため、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化が懸念される状況にあると認識しています。

  以上のような情勢認識のもとで、日本銀行は、金融緩和を一段と強化することが必要と判断しました。特に、企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止することが、現在、最も適切な政策対応であると考えられることから、リスク性の金融資産を中心に資産買入れの額を増額することとしました。具体的には、5兆円程度の増額分のうち、CP・社債等とETF、J-REITのリスク性資産を、3.5兆円程度買入れることとしました。

  ただし、ETFとJ-REITは、日銀法上の認可取得が条件となります。日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を、粘り強く続けていく考えです。引き続き、先行きの経済・物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針です。

  白川総裁は、未曾有の大震災に当たって、金融緩和を一段と強化することが必要だと判断したわけだが、その理由を、「企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止すること」と説明している。つまり、潤沢な資金を供給し続けることで、市場の不安を極力抑え込もうというわけだ。だが、市場関係者の間では「資金繰りに問題があるわけではなく、資金はこれ以上必要ない」という声もあり、実際、日銀の投入を受け入れないケースも出ているという。厳しい見方をする向きは、「日銀一流のパフォーマンスだ。今後、株価の大幅な下落で金融機関の体力が落ちたら、かつて行った株式買い取りを復活させる」可能性も指摘する。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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