関連記事
ガリレオが書いた「手紙」、ロンドンで発見 異端審問を欺こうとした思惑とは
●250年間、誰にも発見されなかったガリレオの手紙のオリジナル
地球は宇宙の中心に位置し太陽は地球の周りをまわっているというキリスト教会の説に反論を唱えたガリレオ・ガリレイの手紙のオリジナルが、ロンドンの王立協会の図書館から発見された。
この手紙は、少なくとも250年前には王立協会の所有となっていたことが判明している。しかし、歴史家からまったく注目されることがなかった。今回、この手紙の発見者となったのは、イタリアのベルガモ大学の若き研究者サルヴァトーレ・リッチャルド氏であった。
●7ページに及ぶ長い手紙
1613年、ガリレオが49歳の時に記されたこの手紙は7ページに及ぶ長いものである。あて先は、ガリレオの友人で当時はピサ大学の数学教授であったベネデット・カステッリである。手紙の最後には、「G.G(ガリレオ・ガリレイ)」の署名が残る。
手紙の中でガリレオは、科学の研究は神学的教義からは自由でなくてはならないと明言している。友人に対して、キリスト教会への不満を訴え、改めて地動説を主張する内容となっている。
●存在する手紙の2バージョンにみるガリレオの思惑
1615年2月7日に、ドメニコ修道会の僧ニッコロ・ロリーニによって行われた異端審問では、この手紙の写しがロリーニからバチカンに送られた。現在、バチカンに保管されているのはこの時の写しである。
その1週間後、ガリレオは友人のピエロ・ディーニに手紙を書き、ロリーニが持っているガリレオの手紙は「改ざんされた」ものだと主張。婉曲な表現を用いた別の手紙をディーニに送り、これを「オリジナル」としてバチカンの聖職者に手渡してほしいと伝えている。またディーニに対して、自身の説に反対する人々の悪意と無知を嘆き「彼らの不正によって改ざんされた手紙によって、異端審問の関係者が欺かれる可能性を懸念している」とも書き、ロリーニ版の存在を改めて「偽物」と断じた。
このガリレオの主張が真実であったのかは、オリジナルの存在が確認されなかったため謎のままになっていた。
●友人であり弟子でもあったカステッリの懸念
そもそも、ガリレオの手紙には数多くの写しがあり、分析すると2つのバージョン存在していたことが判明している。この手紙を書くきっかけには、友人であり弟子でもあった数学者カステッリが関連しているという。
1613年12月13日、ベネデット・カステッリはメディチ家の宮廷に呼び出された。ガリレオの学説がキリスト教の教義に反しているという噂はすでに流布しており、メディチ家の当主コジモ二世とその母クリスティーナ・ディ・ロレーナの懸念は非常に大きかった。ことの重大性を重く見たカステッリは、すぐにガリレオにその旨を知らせた。その結果、ガリレオが書いたのが、今回ロンドンで見つかった手紙と考えられている。日付は、1613年12月21日。その2年後に、表現を婉曲にしたもう一つのバージョンが書き直されたのである。
●ガリレオの真の思いを伝える「オリジナル」
実際、リッチャルド氏が発見した手紙には、表現を訂正している箇所も見つかっている。
例えば、聖書のいくつかの記述について「誤っている」という表現を「真実とは異なるように思われる」と訂正されている。いずれにしても、今回発見されたオリジナルにこそ、ガリレオの真の思いが込められていると研究者は語っている。
また、その他のガリレオの自筆の手紙と筆跡を比較した結果、ロンドンで発見された手紙は本物である可能性が高いとも報告されている。
スポンサードリンク